詩side
今私にはすごく気になることがあるの!
それは…
みんながワイワイお話する中
まだ一言も話してない男の子がいること!
奈留と一緒に来たから
錬や奏と同じお仲間さんなんだよね
みんなが話す中、私の視線は
彼に釘付けなのです!
黒髪で前髪をちょこんと結んだ可愛い髪型
綺麗な二重の真っ黒な目
背はこれまた大きい
人と関わるのが苦手なのか
奏の後ろに隠れるように机に腰掛けてる
だけど…
バッチリ見えちゃってて
隠しきれてないの!
それがなんだかすっごく可愛い!
男の子に可愛いなんて
嬉しくないかもしれないけど…
会話には入って来ないけど
チラチラ目線を向けたり
うんうんと頷いてみせたり
完全に拒絶してるわけではなくて
話しかければ返してくれそうな…
私のように声には出さずに態度でね
カキカキカキ…
≪初めまして、星川詩です。
錬や奏、それから奈留ともお友達に
なったの。
あなたともお友達になれる?≫
彼にそっと近づいてノートを見せてみた
ジーッと見つめて数十秒のあと…
「…(コクリ)」
ゆっくり頷いてくれました!!
思わず跳ねちゃった〜
相変わらず目線は合わせてくれないけど
彼にとってはすごいことなのかも
しれない…
だって、錬や奏や奈留が
びっくりしたかのように
大きく目を見開いてるんだもの!
カキカキカキ…
≪あなたの名前を教えてくれる?
無理に話さなくていいからね。
ここに書いて欲しい≫
彼にそっと渡すとゆっくり受け取り
書いて返してくれた
彼は何て名前なのかな〜?
どれどれ??
≪笹本冬(ささもとふゆ)≫
すっごく素敵な名前だぁ
静かにシンシン降る雪の景色が浮ぶ
うん、冬にピッタリ!
≪とっても素敵な名前だね!
静かに降り積もる雪の景色が見えた。
冬、これからよろしくね!」
笑顔でノートを見せると
ジーッと見つめて数十秒…
「…ぅん」
やっぱりまだ目線は交わらないけど
冬の声が聞こえた
すごく優しい声
男の子にしては少し高い柔らかな声
冬の手をそっと、そしてきゅっと握った
ありがとうが伝わるように…
そしてみんなに笑顔で振り向けば
みんなも優しく笑ってくれた
みんなとお友達になれて
私、すごく幸せだよ
みんなとお友達になりHRも
担任の先生の簡単な…というか適当?な
挨拶で終わり、入学式を無事終えました!
錬や奏、奈留、冬はHR終了と共に
風のように去って行って
今私は律と一緒に仲良く下校中です!
と言っても校門からは別方向だから
校門までだけどね〜
そうだ!子猫の里親さん探ししなくちゃいけないんだった!
律のお家はどうだろう?
鞄からノートを取り出し
カキカキカキ…
≪律、昨日子猫拾ったんだけどね
うちのアパートでは飼えなくて里親さん探してるんだけど…
律のお家は難しい?≫
立ち止まった律にノートを見せると
「ごめん、詩。
うちのマンションもペット禁止なんだ。
その代わり里親さん探し手伝うから」
≪ううん、気にしないで!
でも里親さん探し手伝って貰えるのは
すごく助かる〜!
連絡取りやすいように
アドレス交換したい!≫
「ふふ、もちろん。
見つかり次第メールするわね」
私は笑顔で大きく頷いた
これで早く里親さん見つかるといいな〜
校門でバイバイして真っ直ぐお家に
帰ったら、ベットで丸くなって眠る子猫の
傍にそ〜っと近付いた
早く里親さん見つけてあげるからね
もう少しだけ一緒に過ごそうね!
冬side
俺は全国ナンバー1の暴走族"星竜"幹部
笹本 冬(ささもとふゆ)
今日から仲間と喜仙高校に通う
当たり前だけど式には出ない…
というか、行きたくない…
俺は仲間以外の人間はあまり
好きじゃない…
そう、人間不信だ
人は簡単に裏切るし嘘をつく
見た目で判断して一方的な価値観を
持つから…
特に女は苦手
俺たちの外側だけを見て近付いてきて
媚びを売るか、もしくは怖いと言って
怯えて近付いて来ないかだ
暴走族ってだけで世の中から
弾き出される
だけど…
俺の目の前では信じられない光景
見た目だけで怖いと誤解を受けて
拒絶された錬…
表も裏もないけど仲間以外、特に女には
一線を引く奏…
母親からの虐待、暴力を振るわれて
女が苦手な奈留…
仲間以外に心を開かない奴らが
金髪のちっこい女…詩?には
素の自分を晒している
チラリと視線を向ければ
クルクルと変わる表情
話せないのかノートを使っての筆談
何よりなんの警戒心もない笑顔
媚びを売るわけでも
怖がるでもない
1人の人間として接してるのが分かる
今まで出会った奴とは違う
けど、俺は…
そんな事を考えて足元に視線を
落としていると
俺とは違う、別の上履きが視界に入る
金髪女、詩って奴のだ
下に視線を落としたままの俺の
視界を遮る物…ノート?
≪初めまして、星川詩です。
錬や奏、それから奈留ともお友達に
なったの。
あなたともお友達になれる?≫
俺にそっと近づいてノートを見せてきた
俺もみんなみたいに心を開けるのか…
分からない…
けど、1番信じてる奴らが心を開いた奴だから
信じてみてもいいだろうか
信じてみたい…そう思ったら
思わず頷いていた
「…(コクリ)」
すると、詩はぴょんぴょん跳ね出した
俺と友達になるのがそんなに嬉しいのか?
変わった奴だと思う
こんな目も合わせず、口も開かない
無愛想な俺と友達になりたいだなんて…
カキカキカキ…
≪あなたの名前を教えてくれる?
無理に話さなくていいからね。
ここに書いて欲しい≫
俺にそっと渡されたノートを
ゆっくり受け取り名前を書いた
≪笹本冬(ささもとふゆ)≫
また渡されたノートを手に取り
昔、母親だった人から聞いた
俺の名前の由来がそこに記されていて
かなり驚いた…
≪とっても素敵な名前だね!
静かに降り積もる雪の景色が見えた。
冬、これからよろしくね!」
小さい頃の記憶…名前の由来語る母親の姿
『冬が産まれた日はとても静かで
音もなく降り積もる雪が病室から
見えてね…
それがすごく綺麗だったの。
その景色が忘れられなくて
冬って名前に決めたの』
その時の記憶が頭の中で鮮明に
蘇っていて、気付けば
ジーッと見つめていた俺は
思わず…返事をしていた
「…ぅん」
そんな俺の小さな声に詩は
何も言わずに手をそっと握ってきて
きゅっと握ったから
返事の代わりにきゅっと握り返した
ありがとうが伝わるように…
詩side
アラームの音がする前に私は
起きました…
いえ、起こされました
顔面にダイブしてきた子猫ちゃんによって…
それにしても朝から元気いっぱいで
なによりだ!
私の顔面にダイブした後は
部屋の中をトコトコと歩き回り
満足したのか、私の愛用する
もこもこタオルケットで眠ってます
かなりの自由人…ううん、自由猫かな?
それを横目に学校へ行く仕度をする
昨日は律だけに里親さん探しの
お手伝いを頼んだけど
ここは数打ちゃ当たる戦法で
錬や奏、奈留や冬にもお手伝いを
お願いしてみようかな〜?
私ももちろん探すけど
ここに越してきてからの知り合いが
お友達しかいないし
話せないから無闇に声も掛けられない
ん〜…ビラを配るとか?
だったら写真が必要だよね…
うん、携帯で写メ撮っとこ〜
ーパシャパシャッ
よし、可愛く撮れてる撮れてる!
これをみんなに見せて
相談してみよう〜
子猫ちゃんに行ってきますの挨拶をして
いざ出発っ!!
…で学校に着いたものの
まだ誰も来てないよ〜!
現在の時刻は、7:50ー
HRは8:30からだから
探険でもしてみようかな
でも…迷子になったら?
学校で迷子なんて…と思ったそこの方!
私は類稀なる方向音痴なの!
無闇に歩いて教室に戻れないとなれば
うぅ〜…考えるだけでも恐ろしい
ここはひとつ、漫画あるある
屋上に行ってみよう!
鍵がかかってたら降りればいいんだし
ふふふふふ〜ん!
屋上到着!
開いてるかなぁ…
ーガチャ
あれれ?簡単に開いちゃった…
失礼しま〜す…
心の中で挨拶して扉を開け放った先
うわぁ〜!すっごく空が近い!!
ここでお昼寝とかお弁当食べたら
気持ちいいだろうなぁ…
HRまでまだ30分もあるし
夢のひとつ、屋上でゴロンでも
してみようかな!
ふぅ〜気持ちいい〜
なんだか空に浮かんでるみたい…
見えるのは青空と白い雲だけ
目を閉じれば木々の擦れる音と
鳥の鳴き声だけ…
気持ち良すぎて眠たくなる〜…
でも眠ったら起きる自信がない
けど…
少しだけ、少しだけ…
ーーーー
ーーー
ーー
「ーーーー!」
「ーーー!!」
…う〜ん、何か聞こえる
だぁれ〜??
ゆっくり目を開けてみると…
あれれ?みんなの声が聞こえて
きたような気が…
しかもすっごく近くで見られてるような…
ぼんやりする頭をゆっくり起こして
目を擦る
ぼや〜っとする視界がどんどん
クリアになって…ん?
あ〜みんなだ〜!
寝起きだから締まりのない顔になっちゃう
≪おはよう〜≫
口を動かしてペコッとお辞儀して
朝のご挨拶です
ん?あれ?
1人多い?
お友達になったのは律を除けば4人…
だけど視界には…5人
あれれ?寝ぼけてるのかな、私
1人ずつ指差し確認!
錬!奏!奈留!冬!
最後の1人を指差してコテンと首を傾けて
…???
≪あなたは、だぁれ?≫
ジーッと見つめて思い出そうとしても
分からない…
1番近くにしゃがんでる錬の袖を
クイクイ引っ張って尋ねる
もう1人を指差してコテンと首を傾げた
錬?…赤くなって固まってる
奏、奈留、冬の順番に尋ねても
みんな錬と同じ反応…
誰も答えてくれない〜!
ムムム…
よし、直接尋ねてみよう〜
ートコトコトコ
私が向かう先にいる男の子は
ジッと私を見つめてるだけで
一言も喋らない
わぁ〜すっごく大きい!
一体何を食べたらそんなに大きくなるの?
同じ人間とは思えない
私にもちょびっと分けて欲しいな〜
それにすごくイケメンさん!
短い黒の髪はサラサラ揺れて綺麗だし
目も髪と同じ黒…黒曜石みたい
鼻もスーッと高くて
唇も薄すぎず厚すぎず
あれ?目元…目の下にほくろ?
ん?ゴミ?
顔が遠くて分からない〜
私が観察する間も何も喋らない男の子に
聞きたいけど、今はノートもペンも
教室の鞄の中だし…どうしようか?
みんなの中に紙とペン持ってる人いるかも!
そう思って振り返ると
みんなが一斉に動き出した!
なんか、だるまさんが転んだしてるみたい!
1番近くに来てくれた錬の袖を引っ張って
彼を指差し、首を傾げてみせた
伝わってる?
錬は1度頷いて教えてくれた
「俺らの仲間の1人で
流川北斗(るかわほくと)だ。
ちなみに詩と同じクラスだぞ!
昨日は屋上でサボってたから
いなかったけどな!」
そっかぁ〜だから分からなかったんだ!
うん、納得!
錬に大きく頷いてみせた
初めましての意味を込めて
笑顔でお辞儀!
っていうか…今何時?
携帯の時刻を見て、あらビックリ!!
ーー9:10
錬にそれが見えるように掲げて
袖を思い切り引っ張った
急がなきゃ〜!遅刻遅刻〜!!
先生に怒られるよね、絶対!!
あらゆるジェスチャーをしても
伝わってないのかピクリとも動かない!
ん〜…困った
ノートとペンがないと会話出来ないから
こういう咄嗟の時困るな…
詩、がっくし…
その時頭上から天の声
奏だ!
「詩ちゃん、授業に遅れるから
早く行こうって言ってるんだよね?」
大きく頷いた
「それが伝わってない、伝わらないから
どうしよう?って思ってるんだよね?」
大きく2度頷いた
頭をポンポンして奏が柔らかく笑った
「ちゃんと僕らには伝わってるから
安心してね?」
そっかぁ〜良かった〜
伝わってたんだねぇ〜
胸に手を置いてふぅ〜と息をついた
ん?おかしくない?
伝わってるなら急がなきゃいけないって
分かってるって事でしょう?
思わず眉をひそめる
「なぜ行かないのかが
分からないんだよね?」
今度は奈留だ
奈留に頷いてみせた
「答えは簡単だよ〜!自習だから!
そして…僕らから詩ちゃんにと〜っても
大切なお話とお願いがあるから
ここに居て欲しいの!」
大切なお話とお願い?
なんだろう?
北斗side
俺は全国ナンバー1暴走族"星竜"
15代目総長 流川北斗(るかわほくと)
一昨日、傘下からの帰り道
ある女と出逢った
普段、傘下で起きたことは
俺以外の人間が対処に回る
たまたま俺しかいなかったから
行っただけのことだ
傘下の帰り道、星竜の縄張りである
繁華街を見回ろうとしたのは
ただの気まぐれだっただけだ
路地裏の声が聞こえてきたのも
たまたまタイミングよくそこを
歩いていたからだ
全て偶然や気分、タイミングが
重なって出来た産物だ
それらが揃ったあの瞬間
金髪碧眼の女と出逢う事が出来た
キザな台詞を吐く趣味はないが
あれは…
“出逢うべくして出逢った”
俺にとっては…運命的な出逢い
周りに群がる女達に抱く感情は“無”
どんな女も全て同じだ
媚びを売る、もしくは怯えて遠ざかる
素顔を隠し偽りの仮面をつけて
俺達へと群がってくる
だけどあいつは…あいつだけは違った
助けようとした時も自分よりも
猫に意識を向けていたし
助け出した後も自身の身なりが
崩れている事よりも
猫の安否に安堵していた
俺を見ても怖がる素振りも一切なく
真っ直ぐ俺を見て笑顔を向けてきた
そして心からの感謝の言葉を
俺の手の平に残し
去って行った…
この出逢いを失くしたくないと
初めて思った
なかった事にはしたくない
一瞬の出逢いだったが
守りたい存在と認識した
そして情報に聡い、奏に頼んだ
名前も知らない女のことを…
そして今、目の前に無防備な姿で
猫のように丸まって爆睡してやがる
屋上のど真ん中で寝ている姿は
太陽の光を浴びてキラキラと輝いて見える
金髪のせいなのか、それとも…
こいつ、星川詩自身から
放たれている雰囲気なのか
まるで天使のようだ
起こすのは可哀想だと言う奏の言葉に
起きるまで待とうとしたが
一向に起きる気配がない
4月とはいえまだ少し肌寒い季節だ
風邪を引かせたくない
俺以外に声を掛け、目覚めさせたが…
それは失敗だったと気付いた
起き抜けの無防備な姿
あいつらに向ける柔らかな雰囲気と笑顔
兎に角、仕草全てが
いちいち可愛すぎるんだよ!
心の中で1人ツッコミを入れていると
突然俺を指差し首を傾げた
何度もその仕草を繰り返して
アイツらの反応がないことに
痺れを切らしたのか
俺に向かって真っ直ぐ歩いてきた
…ってか、あの時も感じたが
コイツ、めちゃくちゃ可愛い
なにより…身長も顔も手も足も
全てがちっこ過ぎる
ってか俺がデカイだけなのか?
185センチはデカイのか…いや
コイツがちっこ過ぎなんだ
そんでもって細い、細すぎる
軽く握ったら折れちまうんじゃねーの
…つーか、めちゃくちゃ見られてるぞ
デカイくりくりの目で穴が開くほどに!
と思ったら突然後ろを振り返り
やっと動き出したアイツらを見て
笑ってやがる
クソ可愛いな…
1番近くにいる錬の袖を引っ張って
俺を指差し首を傾げた
ん?そういえばコイツこないだも今日も
一言も口開いてなくねぇか?
頭の中に?マークが浮かぶ俺
そしたら突然錬が俺の説明をし始めた
「俺らの仲間の1人で
流川北斗(るかわほくと)だ。
ちなみに詩と同じクラスだぞ!
昨日は屋上でサボってたから
いなかったけどな!」
納得したのか大きく頷いている
そして笑顔でお辞儀した
すると突然コイツ…詩は慌て始めた
携帯の画面を錬に見せ引っ張って…
一体何がしたいんだ?
全く反応を示さない俺達に
何故か肩を落とした詩…
ってか…
おい、誰かこの状況を説明しろよ!
そんな俺を置いてけぼりにして
話を進める奏
俺、一応総長なんだが…
「詩ちゃん、授業に遅れるから
早く行こうって言ってるんだよね?」
そう問い掛ける奏に大きく頷いた、詩
「それが伝わってない、伝わらないから
どうしよう?って思ってるんだよね?」
また大きく2度頷いた
頭を撫でた奏が気になる一言…
「ちゃんと僕らには伝わってるから
安心してね?」
伝わってるとか伝わってないとか
一体何の話をしてんだよ!
その一言に安心したように
ホッと一息ついた詩は
次の瞬間、眉をひそめた
「なぜ行かないのかが
分からないんだよね?」
今度は奈留だ
奈留に頷いている詩
「答えは簡単だよ〜!自習だから!
そして…僕らから詩ちゃんにと〜っても
大切なお話とお願いがあるから
ここに居て欲しいの!」
声高らかに宣言した奈留を見て
頭に?飛んでいるであろう詩は
キョトンとしたまま首を傾げた
さぁ、やっと俺の出番
詩…俺はお前を姫にする
詩side
大切なお話に頼みたいことって
なんだろう?
でもその前にお話するならアレがないと
返事が出来ないな〜
もちろんノートとペンなんだけど…
取りに行っていいか聞いてみようかな?
錬の袖を引っ張ってノートとペンの
ジェスチャーをしてみた
伝わったかな?
首を傾げてみると
ニカッと笑って
「ノートとペンを持ってきたら
いいんだな?
よっしゃ!取りに行ってくるわ!」
すっごい早さで屋上から消えてった
良かった〜伝わって!
思わずニコニコ笑顔になっちゃう!
みんなと待つこと数分ーー
ーバァンッ!!
突然の大きな音にびっくりしちゃった〜
笑顔で戻って来た錬にありがとうの
意味を込めて笑顔を見せた
「全然構わねぇよ、気にすんな!
詩の頼みなら、むしろ全然オッケーだぜ」
錬も太陽みたいな笑顔で返してくれて
すっごく嬉しい!
早速みんなに大切なお話と頼みたいことが
何なのかを書いて見せた
≪私に大切なお話に頼みたいことって
なぁに?≫
それを覗き込むようにして見てる
読み終えた奏と目が合って、そして…
「大切な話の前に僕たちが、何者かを
説明するね。
僕たちは全国ナンバー1の星竜っていう
暴走族なんだ。
そして此処に居るみんなは幹部以上の人間
北斗は総長、僕は副総長、錬と奈留と冬は
幹部なんだ。
どう思う?」
話終えた奏はもちろん、みんなは
すごく真剣で、でも…
どこか切ない目をしてる…
私よりも大きいはずなのに
すごく小さな姿に見える
漠然と"守りたい"って思ったの
それで心からの笑顔が見たいって…
だから私の今の気持ちを込めて
ノートに想いを綴った
≪暴走族っていうものが何なのか
私には正直よく分からないけど
みんなはみんなでしょ?
私のお友達にかわりないよ!
これからもず〜っと!
周りの人がどう思うかなんて私には
関係ないの。
私は自分の目で見て感じたものだけを
大切にしたいの。
だから、絶対に離れたりしないよ!
みんなの事を知りもしないで悪く言う人や
傷付けるような人がいるなら…
私がコテンパンにしちゃうんだから!≫
なんか偉そうなこと書いちゃったけど
これが私のみんなへの本当の気持ち…
伝わってるといいな〜
読み終えた後、顔を上げたみんなには
さっきの切ない表情はなくて
心からの本当の笑顔…
それを見れてすっごく嬉しい!
思わずニコニコ笑顔になっちゃう〜
頬に手を当てて緩む顔を押さえてたら
みんなが一斉に声を上げる
「「「ありがとう(コク)」」」
ありがとう?どうしてお礼?
う〜ん、分かんないけど
みんなが笑ってくれたから、いっかぁ〜
ふふふ!すっごく胸がポカポカする!
笑顔ってその人だけじゃなくて
周りにも元気とか癒しを与えてくれるから
すっごいよね!
だから今の私はすっごくハッピーなの!
だから私も心からの笑顔で大きく頷いた
私とみんなのやり取りを1人立って
見ていた彼が私の背後にやってきた
ん?なんだろう?
そのままの姿勢で上を見上げると
彼はジッと見つめて、次の瞬間…
私の脇の間に手を入れて持ち上げてきた!
あわわわっ!?
慌てる私を片腕に抱えてその場に
座って、今度は私を膝に乗せて
ジッと見つめてくる
う〜ん…何がしたいのか全く分からない
困った…
彼の膝に乗せられて眉を下げた私に
声を掛けてくれたのは奏
「詩ちゃん、北斗が驚かせてごめんね。
ちなみに北斗に見覚えはない?」
ううんと首を振って大丈夫だよと
笑顔で返したんだけど
見覚えがあるかって…
未だに口を開かない彼、北斗を見てみる
う〜ん…どこかで会ったことがあるの?
この町に来てから知り合ったのは
みんなと律、それから大家さんだけだと
思うんだけど違うのかなぁ〜?
顎に指を置いて左右に首を傾げて
考えてみるけど分からないなぁ…
ーーその時
「猫は元気か」
私の頭上から聞こえてきた重低音の声…
この声知ってる
あの時私と子猫を助けてくれた声だっ!
あれは北斗だったんだ!
すっごい偶然!こんなことあるんだ!
北斗の大きくて温かい手を取って
ブンブン振って笑顔で大きく頷いた
すると無表情だった北斗がフッと
口角を上げて笑ってくれたとき
一瞬時間が止まったみたいに
固まっちゃった…
口元が少し動いただけの微笑みが
すっごく綺麗だったから
驚きと戸惑いと…
そして私の心臓がすごく早い速度で
トクトク音を刻むのが
不思議だったんだけど
これが私の初めての"恋"だなんて
この時の私は気付かなかったの
そして…
この場にいるみんながそれぞれに
私を好きになってくれたことも
気付かなかった…
詩side
子猫を助けてくれたのが北斗だと分かって
るんるんの私!
この町に来てから出逢う人達は
みんないい人ばかりで
私の心はポカポカで超〜ハッピー!!
そんな私に北斗は真剣な表情を浮かべ
私を見つめてくる
他のみんなもさっきまでの笑顔はなくて
真剣だ
これから大切なお話があるんだって
分かった
だから私も真剣に向き合わなきゃ!
そんな私に北斗は言ったの…
「俺達星竜の姫になって欲しい」と…
星竜の姫?
首を傾げた私に奏が分かりやすく
説明してくれる
「さっきも話した通り、僕たちは
星竜っていう暴走族をしてるんだ。
僕たちは全国ナンバー1に立つ暴走族…
だから、その地位を狙ってくる他の
暴走族も沢山いて…喧嘩して先代、
僕たちの先輩が築いてきたナンバー1の
地位を守らなければならない。
だから、危険といつも隣り合わせなんだ。
本当は喧嘩なんかはしたくないし、
仲間を傷付けたくはないんだけど
それが僕たち暴走族の世界。
だけどね、仲間と過ごす星竜という
場所は僕たちの居場所で大切なもの。
僕たちの他にも沢山の仲間達がいる。
その仲間達にとっても星竜は
大切な居場所なんだ。
その僕たち星竜の姫には
詩ちゃんが必要なんだ。
関わってしまえば詩ちゃんにも
危険が付き纏うことになる…
だけど絶対に守り抜いてみせるから
僕たち星竜の姫になってくれませんか?」
暴走族、星竜の姫、喧嘩、危険、守る…
沢山の言葉が頭の中をぐるぐる回って
私の知らない世界があるんだって思った
その世界はみんなにとって大切で
居場所…
そして、その世界はみんなにとって
誇りある世界で居場所なんだよね?
みんなの真剣な想いが伝わってくる
そして、その世界と居場所に
私が必要だと言った奏…
話すことも出来なければ喧嘩も
出来ない私が必要だと言った…
誰かに必要とされるのって
素直に嬉しい
だけど、本当に私でいいのかなぁ?
こんなに真剣な表情と目を向けてくる
みんなに私は何をしてあげられる?
分からない…
だけど、漠然と思うことがある
それは…
みんなが心からの笑顔で居られるように
すること
悩み、苦しむことがあったら
寄り添いたいということ
みんなが傷付けられようとしたら
私が盾になって守りたいということ
何が出来るか分からないって思ったけど
答えは出てるじゃない、私!
私はみんな1人1人に視線を送って
笑顔で大きく頷いた
そしてノートにこう記した
≪私がみんなの力になれるなら
姫になりたい!
私もみんなを守るからね!≫
ノートを見たみんなに安堵の表情と
喜びの笑顔
そして…
「「「「これからよろしく!姫!」」」」
というお言葉を頂きました!
そんなに喜んでくれるなんて
私は幸せ者だなぁ〜!
ふふふっ!嬉しい!
頭上からは重低音の声…北斗だ
見上げた先に優しく見つめる瞳は
黒曜石みたいで綺麗…
「詩、姫になること決めてくれて
ありがとな。
これから先、必ず俺が絶対守ってやる。
だから絶対離れるなよ…分かったか」
そしてまた少し笑って頭を撫でてくれた
そんな風に言ってくれてありがとう
私も守るからね!
そんな意味を込めて笑顔で大きく頷いた
2人で笑い合ってると、突然…
大きく叫び出した錬と奈留
いきなりの大声ですっごい
びっくりしちゃった!
咄嗟に北斗のシャツを掴み
瞬きをしながらそっちに顔を向けると
錬は顔を真っ赤にして
「北斗っ!俺が…じゃなくて俺達だろ!?
しかも…いいい、いつまでその格好でいるんだよ!」
と、どもる錬に
奈留なんて頬を膨らませて
ぷりぷり怒ってるし!
2人ともどうしたのかなぁ?
「北斗だけの姫じゃないんだよ〜!?
僕たちの姫でもあるんだからっ!!
独り占め禁止っ〜!!」
奈留の言ってる意味がイマイチ
よく分からない…
北斗だけのとか、僕たちのとか
独り占めとか…
私は私、誰の物でもないよ?
う〜ん…
あ、でも星竜の姫になるんだから
星竜のお仲間さん達のモノになるのか!
ん?なるの??
1人、北斗の膝の上で考える私は
そしていまだに頭上では口論を続ける
錬と奈留と、それを無視して私の頭を
撫でている北斗
それを苦笑の表情を浮かべ、見てる奏
空をジッと見てる冬を見渡しみた
やってる事はみんなバラバラだけど
でも…なんかいいな、この雰囲気
みんながみんな、自分らしくいれる場所
そんな感じだもん!
みんなと一緒はすっごく楽しい!
心の中で、よろしくとありがとうを伝えた
詩side
星竜の姫になる事になりました!
そして今更に姫になるにあたっての
注意事項などなどを聞いています!
もちろん、分かりやすく説明してくれるのは
奏です
「僕たちが承認してるから心配はないと思うんだけど、僕たち以外の下っ端にも挨拶をして認めて貰わないといけないんだ。
まぁ、詩ちゃんなら誰も文句は無いと思うけどね!
そしてそこで下っ端からも承認がおりれば、正式な星竜の姫になれるんだ。
ここまでは大丈夫かな?」
笑顔の奏に、うんうんと大きく頷いた
そうだよね…
星竜はみんなだけの居場所じゃないんだから
そこの一員になるには下っ端さんと
呼ばれる人達からもオッケーを頂かないといけないんだね
頑張らなくちゃ!
拳を握って気合い入れている私に
みんなが温かい目で見てくれてる事に
全く気付かなかった
それから…と奏が真剣な表情を浮かべたから私も奏を真っ直ぐ見つめて聞く体勢に
「さっきも話した通り、暴走族には
危険は付き物。
喧嘩を仕掛けて来られたり、仲間が
傷付けられたり…
それから今から話すのは姫になる詩ちゃんにとって、とても大事な事だがらね。
まず、どんな些細なことでも
1人きりでの行動は絶対しないこと。
これは他の族が詩ちゃんに危害を加えるだけじゃなくて、誘拐して人質にする事もある。
もちろん、そんな事がないように
僕たちは全力を尽くすけど、不意をついたりして狙ってくる危険な族もいるから
1人きりにはならないこと!」
私には暴走族の世界はまだまだ
分からない事がたくさんある
だから、奏の言葉はしっかりと
頭に入れて置かなきゃいけない
うん、絶対に1人きりでの行動はダメ!!
何よりみんなに心配かけたくないもの…
それにしても誘拐とか人質とか
なんだか物騒な暴走族もいるんだなぁ…
奏言ってたもんね、地位欲しさに
喧嘩を仕掛けてくるって
どうして真っ直ぐ正面から
向かって来ないんだろうなぁ…
そんな事して、もし勝てたとしても
心から喜ぶなんて出来ないのに
少し悲しいな…
そんな事を考える私に奏の話は続く
「それから学校の送迎は僕たちのバイクか
専用の車になるんだ。
だから、行きも帰りも誰かが迎えに来るまで
外には出ちゃ駄目だよ?
少し窮屈に感じることもあると思うけど
1人きりでなければお出掛けしても
大丈夫だから。
もし、立川さんと2人でお出掛けするって
なったら必ず誰かに報告してね。
離れたところから護衛を付けることになるけどね。
それから、学校内外問わず僕たちのファンの女の子達から、嫌がらせを受けるかもしれないんだ。
女の子だからって気を抜かないで欲しい。
どこかの族のスパイかもしれないし。
あと最後に…
放課後、余程の用事がなければ
僕たちの倉庫に来て欲しい。
以上だけど分からない事はある?」
うん、大体の事は分かった!
首が取れそうなくらいに大きく頷いた
ーカキカキカキ
≪分かった!
お出掛けしたい時は事前に連絡しておく事!
絶対に1人きりでの行動はダメ!
送迎はみんながしてくれる!
女の子にも要注意!
放課後は倉庫に行く!
私、必ず守ります!≫
ノートを見せ、返却されたノートを
地面に落とした
そして、みんなに向かって小指を立てて
大きく頷いてみせた
するとみんなが小指を出してくれて
指切りげんまん!!
みんなに嘘をつくのも
針千本は飲むこともしたくないから
必ず守るからね!
笑顔で頷いた
その日のうちに律に話そうとしたけど
まだ下っ端さんからのオッケーが
出てないから姫になることは
まだ秘密にしておいた
そしてその日の放課後ー
星竜の倉庫に行くことになって
今駐輪場なんだけど…
誰が私を乗せるかで揉めてるの
う〜ん、なんで?
私は誰でもいいんだけどな〜
安全運転であれば!
…というか私バイクに乗るの初めてだ
背が低いから上手に乗れるかなぁ?
そうこうしてるうちに結局は
じゃんけんで決めたみたい
最初からそうしてれば良かったんじゃ?って思ったけど、私はお口にチャック!
そもそも話せないしね!
で、誰のに乗ることになったの?
みんなを見上げると一足先に輪を
抜けたのは北斗だ
バイクの前に立って、おいでおいでをする
北斗に小走りで近付いた
うわぁ〜すっごく大きい!
しかも北斗にぴったりの真っ黒なバイク
側面には金色の細いラインが入ってて
なんだか流れ星みたい
ジッと眺めていると頭上から北斗の声
「乗せてやるからバンザイしてみ」
北斗の言う通りにバンザイしたら
突然持ち上げられて、びっくり!!
後部座席に座るも車体が大きすぎて
跨ぎきれない〜!
こんな時足が長ければ良かったのに
私の足…残念トホホだよ
思わず眉をひそめると
顎に手を置いて首を傾げ何か
考え中の北斗さん
やっぱり足が短いって思ってる!?
詩…ガックシ…
マイナスオーラぷんぷんの私の耳に
聞こえてきたのは北斗のとんでも発言!
「詩を乗せるんだから安全運転は
必須だが、これだと俺の腰に手を回しても
後ろが気になって集中出来ねぇ…
よし、俺と同じ運転席に乗って
横抱きして乗せるか」
えっ!?運転席??
しかも横抱きとは??
頭の中でぐるぐる回る疑問が解決する前に
北斗の言う通りにしてみたら…
あら、びっくり!!
すっごく安定してて乗りやすい!
北斗頭いい〜!!
思わず拍手しちゃった
「こら、手を離すな。
ちゃんと俺に引っ付いてろよ」
大きく頷いて、引っ付いた
そして、後ろからすっごく騒がしい声を
聞きながら、いざ!倉庫へ出発だ〜!
北斗の運転は本当に安全運転で
しかも春の暖かな風がすごく
気持ち良かったの!
風を感じるってこういう事なのかも
しれない
それに北斗にぴったり引っ付いてると
すごく安心できる
北斗の心臓がトクトクと音を立てて
眠い時には子守唄になりそう!
そんなこんなで無事に倉庫へ
到着しました!
北斗が私を片腕に抱えて倉庫に
入るや否や…
「「「こんにちは!!!」」」
すっごく元気な挨拶でお出迎えしてくれたのは、きっと奏が話してた下っ端さん達だ
北斗の腕の上からだけど
見渡す限りの人、人、人!!
しかもとってもカラフルで
見てるだけで楽しい〜!!
ここがみんなの居場所…
綺麗に掃除されててゴミなんて
ひとつも落ちてないし
バイクも綺麗に並べてある
窓も床も階段も全部綺麗!!
それだけでここを大切にしてる事が
分かるよ
興味津々にキョロキョロする私に
「ここが俺達星竜の倉庫で
大切な居場所だ、気に入ったか」
北斗に尋ねられて私は笑顔で頷いた
そしたら北斗も少し笑ってくれたの!
自分の大切な物や人を同じように
大切に思ってくれたら、それは
すっごく嬉しいことだって
私知ってる
だから私にとってもここは
これからの私の大切な場所になる
そして、ここにいる全ての人達も…
北斗side
俺達が暴走族であることを
詩はどう思い感じるのか
不安がなかったとは言えない
けど…
詩はやっぱり、すごい奴だと思った
暴走族に関して無知だとはいえ
それでも…
≪暴走族っていうものが何なのか
私には正直よく分からないけど
みんなはみんなでしょ?
私のお友達にかわりないよ!
これからもず〜っと!
周りの人がどう思うかなんて私には
関係ないの。
私は自分の目で見て感じたものだけを
大切にしたいの。
だから、絶対に離れたりしないよ!
みんなの事を知りもしないで悪く言う人や
傷付けるような人がいるなら…
私がコテンパンにしちゃうんだから!≫
そう言って笑顔を見せてくれた
それが、その言葉がどれだけ
俺達の心を癒してくれたか
詩は分かっていないんだろうな
そして俺達に向ける笑顔が
どれだけ人を惹きつけるのかも…
俺だけじゃなくて、ここにいる
奏や錬、奈留や冬も
詩の笑顔と言葉に惹きつけられてる
大切な仲間だけど
こればかりは譲れねぇ…
総長の女=姫という
この世界の暗黙のルールがある
けど、まだ詩は誰のものでもない
誰にだってチャンスがある状況だ
このチャンスを生かすも殺すも
自分次第…
絶対に俺のものにしてみせる
詩、覚悟しておけよ
詩side
下っ端さんの1人が恐る恐る声を上げる
「あの…総長、そちらは
どなたなんでしょうか?」
それを聞いた北斗は…
「これから報告がある。
集まれる奴は全て集めろ。
話はそれからだ、集まり次第声を掛けろ」
「了解しました!」
北斗の言葉に下っ端さん達はキビキビと
動き始めて、倉庫内は活気に満ちてる
すごい…
私は北斗に抱えられたまま
ある部屋に入ったんだけど…
一人暮らしの私のアパートよりも
大きくて家具とかも私の物より
断然多いなんて!
開いた口が塞がらないとは
正にこの事だと思った
それぞれがみんなソファーに
腰を下ろす中…
何故か私は北斗の膝の上
他にも沢山空いてるのに、なんで?
ノートに疑問を書いて北斗に見せる
≪北斗、他にも座れるソファーあるから
降りるね?
私がここに座ってたら北斗の足が
痺れちゃうから!
降りてもいい?≫
そしたら、ものすっごく眉間に皺が!!
なんで〜!?
怒らせるようなこと書いたかなぁ?
何度見ても怒らせる要素はない…と思う
首を傾げながら考えていると
ノートを覗き込んできたのは奏
クスクス笑いながら
私の耳に手を当てて答えを教えてくれた
「北斗はね、詩ちゃんと離れたくないんだよ
こう見えて寂しがりの甘えただから」
うそ〜!?北斗が??
でも、人って表に出してる部分だけが
全てじゃない
外に出せない部分も沢山あって
その全部で1人の人間だもの
みんなだって
きっと外に出せない部分がある
それを自分の中にしまい込んでるのかもしれない
それを無理矢理こじ開けることは
私は絶対にしない
みんなが出したいと思える、その時まで
私は待つ…
そしてそれを見せてくれた時は
真剣に向き合い、寄り添いたい
受け止めるだけの力があるかは
分からないけど
その時の私の精一杯で接しようって思う
そういえば、ここは何のお部屋?
≪ここは何をする為のお部屋なの?≫
疑問をノートに綴り北斗に見せる
「ここは幹部室って言って
俺達幹部以上の人間しか入れない部屋で
倉庫に来たら大半はここで過ごす」
へぇ〜幹部室って言うのか…
大半を過ごすから家具が沢山あるんだね
ここでみんなは放課後過ごしてるのかぁ
なんだか秘密基地みたい!
ふふふって笑ったら
みんながキョトンと首を傾げてる
いきなり笑ってコイツきもいとか
思われた!?
いや、実際きもいかも!!
私は慌ててノートに書いて見せた
≪ここはなんだか秘密基地みたいだなって
思ったの!
そしたら、すっごくワクワクしちゃって≫
錬と奈留は
「「なるほど〜!その通りかも(ね)!」」
と声をハモらせて
それを聞いた冬は小さく頷いた
奏にはクスクス笑わられてしまって
なんだか恥ずかしい〜!
子供の発想って思われたかも…
うぅ〜…
北斗なんて声には出してないけど
肩を震わせてるし!!
声に出してなくても膝に乗ってるんだから
振動で笑ってるって伝わってるんだからね!
むぅ〜!いいもん!
私は心も身体もちっこいの!
そんなの言われなくても
知ってるもん!
ふんだっ!!
頬を膨らませてプイっと顔を背けた
そのあと、みんなからはごめんねの
謝罪を有り難く…いや!仕方なく
頂戴しました
ーコンコン
ん?誰か来た?
扉を開けて顔を覗かせたのは
さっき北斗に質問してきた下っ端さんだ
錬の黒色バージョン〜!
バチッと目が合ったから
笑顔でお辞儀したんだけど…
お顔がすっごく赤くて口をパクパクさせて
固まってる
どうしたのかなぁ?
首を傾げながら考えていると…
「全員揃ったのか」
と、北斗の声
それによって彼は金縛り?から解けて
「全員揃いました!
よろしくお願いします!」
と、お辞儀して部屋を出て行った
それと同時に北斗の膝の上から降りて
手を引かれながら幹部室を出た
私の目の前…というか一階部分に
満員電車かっ!と突っ込みを入れたくなるくらいのカラフルな頭の人だらけで…
すっごくびっくりしちゃった!
幹部室に居たのはものの数十分…
その間にこれだけの人が集められるなんて
お目めが落ちるくらいびっくりだよ!
しかもその沢山の人達が全員二階にいる
私達…というよりは
北斗達を見てる
その目には、尊敬や憧れ、信頼が
映し出されていて
改めて北斗達がみんなにとって
すごい人達なんだって分かった
なんだかそれを嬉しいと思う私は
おかしいかな?
まだ出逢って数日の私…
かたや、ここに居る人達は
長い時間と日々を過ごしてきてる
それは変えようのない事実だけど
私は思うの
ここに居る全ての人達が思うように
私もみんなを誇りに思うって…
そしてみんなをキラキラした目で
見つめる全ての人達も!
みんなが誇りに思う仲間
みんなを誇りに思う仲間
そんな星竜のみんなと
私も仲間になりたい!