家に着く前に、涼すけは手土産に、と家族分のゼリーを買っていた。
そんなん全然いいのに。

そんな気を使うような家族でもないって


「うわー…、今となってはこの豪邸も納得…」

「おーい、入るけど」

「ちょ、心の準備がっ…!!」

「いや、全然普通の家族だから」

「どこがっ!!」


そんなことを家の前でやっていたら


「あれ、荒木本当に来たんだ」

後ろから、飛鳥が帰ってきた。


「あ、飛鳥くん…
ってか飛鳥くんと話すの初めてな気がする」

「あ、確かに。
ってか何やってんの?入れば?」


飛鳥はそう言って門を開け、俺らが入るのを待ったから
涼すけもすぐに門の中に入った。


「ってか荒木ってモテそうだけど、なんて碧翔なの」

「どういう意味だコラ」

「はは、本当だよね」

「おいコラ」

「まぁやっぱり
一緒にいて楽で、楽しいからじゃないかな」


楽で、楽しいから、か…
俺も涼すけの前だと自然でいられる。

良い子でもなく、悪い子でもなく
本当普通な俺だけど
こんな俺でも、好きになってくれたんだもんな


「楽、ね。なるほどね」

「飛鳥くんは彼女いないの?」

「まーうん。
別に今は良いかなって感じ。それより音楽のが大事」

「あー、そんな感じする。
碧翔もそのくらい演技に打ち込んだらいいのに」

「俺もそう思う。お前演技力あんのに」

「・・・とりあえず部活は行くわ」

「社長さんに演技やりたい言ったら即契約なはずなのにもったいな」

「いいんだよ、俺は俺のペースで」


そんなことを話していたら庭も抜け、いよいよ玄関に到着した。

とは言え、緊張してる涼すけのことなんかまったく気にしない飛鳥はさっさと玄関のかぎも開け、

「ただいまー」

と普通に中に入った。


その声に、すぐに母さんはリビングから出てきて


「ん、どうぞ」


俺は涼すけを中に招き入れた。