「へ…でも…」



結衣は、泣きそうになりながら俺を押し返そうとする。




「俺がいるから」



「…っ」




結衣の手が止まった。



ずっと、1人で抱え込んできたから、頼るなんて言葉、知らないんだろう、きっと。



だから、心のどこかでは今の生活を直したいって、思ってるのに、1人じゃ踏み出せないでいる。




「咲久も未央もいる。殴ってくるやつはもういない。



結衣はずっと、1人じゃなかったよ」




「…っ、う、んっ」




俺が笑って言うと、結衣は少し笑って頷いた。




「礼央くんに頼るのは、あり…?」




「あり」




「助けてくれるの…?」




「結衣が困ってるなら」





「そっか」




結衣は抵抗する力を抜いて、目を瞑った。



俺は、目を瞑った結衣の横に沈んだ。




無性に抱きしめたい。



ただ、抱きしめてしまったら、欲望のままに動いてしまう気がする。