「ひとつしかないベッドで眠るなんて、なんだかいやらしいね」


「はい?何を言い出すんですか!」


枕を投げ付ける。

自分の部屋から掛け布団と枕を持ってきたから、それぞれ2つずつあるけれど。

ベッドが1つであることには変わりない。


セミダブルのベッドで、好きな人と眠る。


ーーもしかして、

覚悟を決めるべき?



シャワーも浴びたし、ある意味準備はできているけれど…



「ふふ。まぁ今夜は手を繋いで、ゆっくり眠ろうよ。…それとも、何か期待してた?」


「してません!」


余裕のある笑みに、唾を飛ばす勢いで反論する。


「それじゃぁ、おやすみ」


先に横になった黒瀬先輩は半分スペースを空けてくれて、手を差し出した。


「おやすみなさい」


その手をとり、横になる。


黒瀬先輩もこちらを向いてくれて、顔を見合わせる。


同じシャンプーの香りがした。



「本当に幸せな夜だね」


優しい笑みに、心まで満たされる。