結局、アイスを頼んだ。


「ルームサービスなんて贅沢ですね!」


「たまにはね」


窓際の椅子に腰掛けて2人で窓の外を眺める。


キラキラ輝く街並み。

緊急事態で見知らぬ土地に足を踏み入れたけれど、仁くんの病室で寝泊まりしている時も、今も、なんの心配もないと思ってしまう。2人が居てくれるから、大丈夫だって思ってしまう。


「あ、仁くんにメール送っておこうかな」


アイスのスプーンを片手に、携帯を取り出すと案の定、仁くんからのメールが入っていた。


"良斗に会えた?"
短い配慮のメールに、"会えたよ、ありがとう"と返信する。


「仁くんとは会って帰らないんですか?」


「今は大変な時期だからね。もう少し落ち着いたら、また会いに来るよ。まぁ会ってくれるかは分からないけど」


苦い顔で黒瀬先輩は言う。

兄弟の溝はまだ深いようだ。


「会社のことなんですけど、2人で手を取り合ったらきっと上手くいくと思うんです」


余計なことかもしれないけれど、言わずにはいられない。


「俺が協力することは仁のプライドが許さないんじゃないかな。でも声を掛けられたら、迷わず頷くと思うよ。教師になる夢も捨てきれないけどね」


小さい頃から、
仁くんは弟を羨み、妬んできた。
黒瀬先輩は、兄を慕い、縮まらない距離にもどかしさを感じてきただろう。

いつかそんな2人の架け橋になれたらいい。
2人のためにできることを、探していきたいな。