言い終えると同時にエレベーターが目的階に到着した。

くっ付いてきた時と同じように素早く離れた黒瀬先輩は、静かに「降りて」と促した。


恥ずかしさに顔を見れずに言われた通り、エレベーターを降りた。



「離れたくないのは、俺も同じだから。今夜は一緒にいよう」


再び繋がれた手を、ギュッと握り締める。


「夢みたいだと思えるほど素敵な夜であることには共感するけど、夢のようにいつか覚めるものであることは否定するよ。俺の愛情はそんなに温いものじゃないって、これから証明していくよ」


「黒瀬先輩…」


「ところでルームサービスでアイスでもとる?デザートは別腹でしょう」


「もう、お腹いっぱいですよ!」


甘い雰囲気になるかと思いきや、一気に緊張感が吹き飛ぶ。

それもまた彼の配慮だと分かるから、嬉しくなる。


部屋に入る前にはもう不安な気持ちは消えていた。