ホテルのラウンジで軽食を食べる。
お昼を過ぎているせいか閑散としていた。
サンドイッチを食べる仁くんの横で、お昼ご飯を済ませている私はオレンジジュースを飲む。
「そうだ、春嶋さんから菜子のお母さん宛にお土産を預かったんだ。忘れないように持って行ってね」
春嶋さん、仁くんは私の父をそう呼ぶ。
「ありがと。お母さん、喜ぶね。お父さんと会えなくてすごく寂しそうなんだよね」
「そうだよね…ごめんね、僕が半人前のせいで」
「なに言ってるの?仁くんのせいじゃないよ。お父さんだって新しい仕事にやりがいを感じてるって言ってたよ。それに仁くんは立派だよ」
「そんなこと…」
「私が保証する!仁くんは凄い人だよ」
両親を亡くした辛さを乗り越えて、新しい道を泣き言ひとつ言わずに進んでいる。私だったらそう強くは在れない。
「会社を継ぐことは優秀な弟にさせるべきだという意見が多くて。未だに僕が後継者であることに反対の者は多いんだけど。菜子さえ、味方で居てくれたらーー僕は、大丈夫なんだ」
「それなら仁くんは一生、大丈夫だよ。私はこの先もずっと、仁くんの1番の味方だから」
言葉に嘘はない。
私が仁くんの敵になる未来なんてありはしない。