柴ちゃんの表情は少しはにかんでいて、それはテレ屋の少年のようにも、実直な青年のようにも見えた。

きっとこんな顔、男友達の前では見せないんだろう。


ダメだ、止まれ、引き返せ、わたし……。
ずっと頭の中で繰り返してきたその声が、どんどん遠く、小さくなっていく。


柴ちゃんが両手を胸の前に出して、手のひらをこちらに向けた。

大きな手。節の張り出した長い指。約束のハイタッチの合図。

わたしも同じように手のひらを彼に向ける。

一瞬のアイコンタクトを交わし、どちらからともなく腕を伸ばした。

ほとんど音も鳴らないくらいの強さで手のひら同士が合わさる。

触れた部分だけで混ざる体温、言葉もなく交わる視線……。