翌朝は、普段より1時間も早く目が覚めた。
となりで寝息をたてる賢二郎の、いつもと変わらない寝顔を見ながら、そろりとベッドをおりた。
キッチンでお湯を沸かしてコーヒーを淹れる。わたしは一年中アイスコーヒーよりホットが好き。
いつものドリップコーヒーを、いつものマグカップに淹れて、いつものソファの定位置に腰をおろした。
目に映る光景は、すっかり住み慣れたマンションのリビング。
――うん、いつも通りだ。
そんなことをわざわざ実感するのは、昨日、初めてのバイトで慣れない環境に触れたせいだろうか。
「さてと」
コーヒーを飲み終えたわたしは、久しぶりに手のこんだ朝食を作ろうと思いつき、キッチンに立った。
白身魚ときのこの蒸し焼き、レンコンと塩昆布の和え物、なすの煮物、そしてすり身団子のすまし汁が出来上がったタイミングで、賢二郎が起きてきた。
「おはよう。なんか豪華だね」
ランチョンマットに並ぶ器の数を見て、賢二郎が驚きの声をもらす。
「なんか早く起きちゃったから、いろいろ作ってみようと思って」
「いい匂い」
わたしたちはいつも通り向かい合わせに座り、「いただきます」と手を合わせた。