蒼の顔を見ればニヤニヤしている。
俺が日菜子と一緒に居た、そのマドンナと言われる彼女を気にしていたのを見抜いたらしい。
蒼はその辺が鋭い。
なのに、本人の恋愛はヘタレである。
「つまり、お前は俺に日菜子への橋渡しをしろと?」
ジト目で言ってやると、蒼は両手を合わせて拝む様にして言う。
「今年こそ、瀬名さんとお近付きになりたいんだ!頼むよ、要」
情けない声を出すヘタレな俺の親友に、俺は溜息をつきつつ返事をしてやる。
「仕方ないな。でもお前、ほんとに頑張れよ?」
「高校最後の夏、しっかりカレカノで過ごしてやる!」
ある意味健全男子な思考回路を口にする蒼の肩をポンポン叩きつつ、仲良さそうに話している日菜子と汐月さんを見て俺はまず、日菜子へと声を掛けに行く事にした。
side 有紗
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私が前の席だから、日菜子と話せば必然後ろ向きなわけで。
そんな私の視界にはこちらに近付いてくる、日菜子の幼なじみとそのお友達なサッカー部の部長さんが目に入る。
「日菜子、二人がこっちに来る!」
そんな私の声に、驚いているうちにあの二人は私達の席の横に来る。
「日菜子、久しぶりに同じクラスだな。今年一年よろしく」
日菜子に声を掛けてきたのは、あの面倒そうな顔をしていた幼なじみの彼。
今は少し穏やかな顔をしてる。