みんなでカレーとサラダを食べ終わると、お姉ちゃんとお母さんがお茶を入れてくれて、私の焼いたケーキも切り分けて出してくれた。

「これ、有紗が作ったの?!」

かなり目が見えにくくなっているのを知ってる要くんは、ケーキを見てとても驚いた声を上げる。

「自由登校になって、かなり時間があったでしょ?だから練習したの。要くんに手作りのお菓子をあげたくて。付き合って初めてのバレンタインだから」

言いながら少し照れてきて、私は少し俯くと要くんがキュッと手を握り額を合わせてきた。
至近距離になって、少し経つと久しぶりに合った私の目のピント。
要くんはとても嬉しそうに、そして少し目の端に涙が浮いた顔をしていた。

「有紗、考えて頑張ってくれてありがとう。有紗の手作りのお菓子食べられると思ってなかった。こんな素敵なプレゼントを用意してくれてありがとう」

要くんの綺麗な顔にひと滴、伝っていった涙を見て私は手を伸ばしてその頬に触れた。
濡れた頬に私はクスリと笑って言う。

「来年も作れるように頑張るからね!」
「うん、ごめん。今俺カッコ悪い……。嬉しくて泣けた……」

そんな私たちを両親もお姉ちゃんも宏樹くんも温かく見守ってくれていた。

みんなで食べたケーキは、甘くてとても美味しかった。