目が合うと、要くんは苦笑して言った。

「もしかしてさ、有紗はこの話をしたら俺が離れていくと思ってた?」

その問いに、私は上手く答えられない。
要くんの声がいつになく、冷えて聞こえてきて私は固まってしまった。
それは肯定と同じだ。
そんな私に要くんの悲しい声がかかる。

「そっか。まだまだ俺の気持ちは有紗に全然届いてないわけか……」

パッと顔を上げれば、その顔は悲しげで私の胸に痛みが走る。

「大切に想ってくれて、ことある事に行動でも言葉でも伝えてくれてるよ。その度に嬉しくて幸せで、胸がいっぱいになるよ」

素直に感じている事を言葉にして伝える。
要くんは少し目を見張ると、話し始める。

「少なからず気持ちが伝わってるのは分かった。でもちゃんと届いてないと意味が無い。俺この前言ったと思うんだけど、届いてなかったか?」

その言葉にはたと気付いて、私は自分の右手を見る。

その私の様子を見て思い出した事に気付いた要くんは、フーっと息をつくと苦笑しつつ言った。

「ちゃんと届いてなかったみたいだな。もう一度言うよ」

そして、一息つくと要くんは言った。

「有紗、今はお互い右手に着けたけど、いつかちゃんと大人になった時これよりしっかりしたのを左手に贈りたいと思ってる。それくらい本気で好きだから、それを忘れないで」

そして要くんはあの時の言葉を言って更に続けて言った。