「鈴加?おい!鈴加!!」

思ったよりも帰宅が遅くなり、静かに入った玄関でゆっくり靴を脱ぐ。
真っ直ぐ向かった先は鈴加の部屋だ。

そっとドアを開けると、鈴加は眠っていた。
だが、安らかにと言うわけではなかった。

確かに眠っているのに、その頬は涙に濡れているし、ひどくうなされているようで苦しそうな辛そうな表情だった。

俺は思わずベッドに膝を乗せ、鈴加を抱きあげてかき抱いた。
それでも目を覚まさない鈴加の頬を名前を呼びながら軽く叩く。

その刺激にやっと目を開けた鈴加は、視線をさ迷わせた後でゆっくりと俺を見つめる。

「大丈夫か?怖い夢でも見たのか?」

俺の問いに涙の溜まった瞼をふせながら頷く。
俺はぎゅっと抱きしめて優しくその背中を撫でてやった。
それに安心したのかホッと息を吐いて力を抜いた鈴加は再び何事もなかったかのように眠ってしまった。

柔らかい表情になった鈴加をそっとベッドに寝かせて、俺は部屋を出た。

朝になったら話を聞こう。
いや……聞かない方がいいのか?

鈴加の全てを知りたい気持ちとそっとしておくべきではないかと言う、相反した思いに悶々としながら俺もベッドに潜り込んだのだった。