それから1時間もしないうちに鈴加は起きてきた。

俺の方が疲れてソファーで眠ってしまい、鈴加が毛布をかけてくれたのを感じて目を覚ましたのだが……すぐそばで鈴加が座り込んで俺を見ている視線を感じて目を開けられないでいた。

「ごめんなさい……また高嶺さんに迷惑かけちゃいました……相良先生にも実咲さんにも心配させちゃったし……きっと起きたら怒られるんだろうなぁ~」
そう言って俯いた鈴加の頭に、軽くコンと拳を当てながらわざと低い声で怒ってやる。

「バ~カ!怒るに決まってるだろ!なんで献血なんて鈴加らしくないことをしたんだ?俺が納得するようにちゃんと話せよ!」

「うぅぅ…痛いです。」
「嘘つけ!こんなのより注射器の針の方が痛いだろうが?怖いんじゃなかったのか?なのによく献血なんてできたな?」

「……自分でもそう……思います。」
「そうか……で?何があったんだ?」

俺が尚も話すようにしつこく促すとやっと話始めた。
人生初の献血にチャレンジするはめになった経緯をぽっりぽっりと話してくれた。

すべて聞き終えた俺は、怒りから鈴加の職場に怒鳴り込みに行こうかと本気で考え始めていた。
それを見抜いたらしき鈴加に頼むからやめて!と言われてとりあえずは断念したのだが、近いうちに文句のひとつぐらいは言ってやらねば!と思う。
薬の効果か昨夜よりは顔色が良くなった鈴加に安堵しながら、ふたりで朝ごはんだか昼ごはんだかよくわからない食事をとって、
お互いに自室に引きこもり夕方まで眠った。
すっかり暗くなってから目を覚ましてふたりで笑いあった。
久しぶりにゆっくり眠れた気がした。