最後にオレンジ系の口紅をひいてお仕舞い。

少し前に芽衣子からお土産にもらった口紅の色が最近お気に入りで、頑張るぞ!と気合いを入れる日に使っている。

「気合いかぁ~きっと今日もあの人達が絡んでくるんだろうなぁ……」

昨日の3人組を思い出して渋い顔になる。
鏡に映る自分の顔色の悪さに、これじゃぁ高嶺さんが心配するはずだと妙に納得してしまった……。

部屋を出てリビングに戻ると、高嶺さんはすでに片付けを終わらせたみたいで、ソファーに座って新聞を読んでいた。
私がリビングのドアを開けた音で顔を上げてこちらを見る。

「じゃあ。行ってきます。お昼用にお弁当作ってありますから、良かったら食べてくださいね、えっと、高嶺さんは夕方から出勤なんですよね?」
「あぁ。今夜は泊まりだから戸締まりには気を付けろよ?何か困ったことがあったら相良のとこにでも行ってこいよ?実咲さんが居ると思うし。」
「はい。でも大丈夫ですから。」
なんか過保護なお父さんみたいな感じだなぁ~なんて思いながら苦笑いで返事を返すと、高嶺さんはまた新聞に視線を戻す。
よっぽど気になる記事でもあるのかな?
ちょっと気になったが、時間がヤバイ!
私はもう一度行ってきます!と口に出してからあわてて玄関に向かった。

玄関で黒いパンプスを履き、いざドアを開けた瞬間!?

「待った!」

ぐいっと腕を掴まれてそのまま後ろから抱き締められた。

えっ?
驚いて固まってしまう。

「悪い。なんか俺のほうが寂しくなっちまたみたいだ……。ごめん。弁当ありがとう。行ってらっしゃい!」

名残惜しそうにぎゅうっと抱きしめた後に手を離されて思わずよろけてしまう。
そんな私を咄嗟に抱き留めて、頭を子供にするみたいに撫でてから、高嶺さんは頑張れよ!と言って送り出してくれた。

私は高嶺さんからパワーを分けてもらったような気がして張り切って歩きだした。