「お………さま……
おじょ…さま……
お嬢様。」
扉の入口で執事服の老人が後ろで手を組み、立っている。
広い部屋の中央には天蓋ベッドが一つ。
白く透けたレースがキングサイズほどあるベッドを覆っている。
執事の老人はベッドに近づく。
執事「お嬢様、直に迷い人が堕ちて来られます。」
言葉に反応するかのように白い布が動き、中から一人の少女が起き上がった。
少女「迷い…人……」
執事「はい、博士からの確かな情報で位置も特定しております。」
慣れた手付きでベッドの脇に置いてある、グラスに水を注ぎ、少女に手渡した。
少女はグラスを受け取り、波紋を見つめ一口口に含む。
執事「参られますか?」
執事の問いに、少女は間を空けずに答えた。
少女「あぁ、すぐに行く。
準備を。」
執事「かしこまりました。」
部屋を出ていく執事を見送り、ベッドから降りた少女は天窓から見える月を見つめた。