「けど、譲のお父さんが決めたっていうのが厄介だね」

「そうなのか? たっくんと一緒にいたときに私も雨宮の父は昔会ったことがあるが、優しそうな人だったはずだが」

「そうだよ。だからこそ、譲はお父さんには基本的に逆らわない。……家の中で唯一譲の味方をしてくれた人だから」

……そうだ。

原作でも雨宮の過去に触れていたことがある。


幼い頃、人よりも体力がなくて兄たちよりも秀でた才能がなかった雨宮譲を母親は欠陥品と呼んでいたらしい。


そんな環境で育った雨宮譲に唯一優しくしてくれて愛情を注いでくれたのは父親だった。

それが兄たちは気に食わず、雨宮譲を疎み、嫌味ばかり言っていたそうだ。


そして、母親も兄たちも可愛がっていたのは甘え上手な末の弟。

雨宮譲は欲しいものは弟に奪われ、我慢を強いられていた。



けれど、父親だけは息子たちを平等に見てくれているとわかっていたので、歯向かうようなことは一度もしてこなかったらしい。