「でも!」

「……ごめん、私も先に戻るね」

納得がいかないといった様子のスミレを置いて、瞳も先に戻って行ってしまった。

いつだってスミレのことを気にかけていた瞳が、悲しげなスミレを置いていくなんて。


バラバラになっていく。

そんな気がした。


笑顔で溢れていたこの空間が嘘のように変わってしまった。



「お前はそれでいいのか」

「え?」

「さっきからずっと黙ってる」

桐生がこの空間で誰よりも冷静な気がする。

天花寺は言葉も出ないと言った様子だし、浅海さんも流音様も困惑している。


「……瞳たちが本当にそれでいいのなら、祝福するべきだわ」

「さっきのあいつら見て、幸せそうに見えんのかよ」

……見えるわけがない。雨宮は抵抗すらできないように見えた。


瞳も、おそらくは悩んでいる。

けれど、他人の家の問題に対して迂闊に口は出せない。



「た、拓人、そんな言い方しちゃだめだよ!」

「たっくん、荒ぶりタイムだな。鎮まるのだ」


桐生は注意をする天花寺と流音様を睨みつけると、「うるせぇ」と吐き捨てた。