「蒼?」

「俺は……ここにいても、いい……?」


微かに震えた声は消えそうなくらい小さかった。

けれど、私たちにはしっかりと届いていて、顔を見合わせて笑う。


「当たり前じゃない! 蒼は私の自慢の弟よ」

握りしめた蒼の手の甲にぽたりと涙がこぼれ落ちた。

いい子でいるようにと気を張って、押しつぶされそうな不安をいつも必死に隠していたのかもしれない。


「ありがとう……俺を、この家に置いてくれて。亡くなった両親のことも忘れないでいてくれて、本当に……っ」

蒼の髪を思いっきりくしゃくしゃにして、俯きがちになった顔を上げさせる。


「蒼のことを傷つけるやつらから、私が全力で守るわ! 嫌なことを言ってくる人がいたらすぐに言って!」

「……けど、姉さん危なっかしいから」

「どこが危なっかしいのよ!?」


困ったように笑った蒼の目から涙がぽろりと零れおちる。

この笑顔を守っていきたい。


大事な私の弟なのだから。