中等部三年の初夏。あともう少しで高等部に上がってしまう。

前世の記憶を取り戻してから、漫画の知識があるため色々と警戒してしまうようになった。それにお嬢様という人たちは裏側になにを隠しているかはわからない。


「ごきげんよう、真莉亜様」

胸元まで伸びた黒髪に、長い前髪が緩やかに巻かれているのが色っぽい綾小路あやのこうじ雅みやび。


「ごきげんよう、雅様」

いつもにこにことしていて温厚な雅様。人が良さそうだけれど、彼女にスープをかけてしまったのがきっかけでヒロインは『花ノ姫』に嫌われ始めるんだよね。

本人が悪いというよりも周りが積極的に嫌がらせしていたけれど、漫画だと雅様はそれを知っていても止めていなかったんだよなぁ。

だから、ちょっと何を考えているのかわからない人だ。気をつけた方がいいかもしれない。


「ごきげんよう!」

おっと、出た! 『金雀枝の君』こと片桐英美李(かたぎり えみり)!


「英美李様、ごきげんよう」

栗色の髪をハーフアップにしている彼女はヒロインを真莉亜と一緒になっていじめていた『花ノ姫』の一人だ。怒るとかなり面倒で気の強い人。