なにも言えなかった。

どうして原作と変わってしまったのだろう。いや、そんなこと考えなくてもわかる。

私が変えてしまったんだ。天花寺と浅海さんの恋愛を崩してしまった。


自分の運命が変わることを願っていたけれど、浅海さんたちの恋を変えることは願っていなかったのに。


なんだか気まずい空気のまま天花寺と児童館の方へと戻ると、雨宮がちょうど館内から出てきた。

灰青色の浴衣姿の雨宮は柔らかそうなミルクティー色の髪を片方だけ耳にかけていて、普段より色っぽさを醸し出しているように見える。


「悠、屋上で呼んでるよー」

「わかった。ごめん、ちょっと急ぐね」

慌ただしく天花寺が児童館の中へ入って行ってしまい、取り残された私は何故か雨宮と向かい合っている。

気まずかったから助かったけど、雨宮は天花寺と行かなくてよかったんだろうか。



「雲類鷲さん、ちょっとこっち来てー」

「え、うん」