「そう思っていただけるのは光栄なことですが、私の言っている意味は」
「友達以上をこの先望みたいって言ったら、困らせる?」
天花寺が足を止めて、振り向いた。
夜の闇に染まった双眸に月の明かりが差し込み、淡く光を放っている。
その姿は目眩がしそうなほど綺麗だった。この世界がファンタジーだったのなら王子様は確実に彼だろう。
「……なにを言っているんですか。そんなのおかしいです」
だって、天花寺は浅海さんと恋に落ちる運命なのに。こんな展開はありえない。
「おかしくなんてないよ」
「おかしいです! 第一、私の一体どこに」
「気がついたらいつも目で追っていたから、うまく説明はできないけど……言葉で説明できないと納得してくれないかな」
いやなくらい心臓が大きく脈を打って存在感を主張してくる。
これは私が知っている展開じゃない。