「下駄、大丈夫?」

「慣れていないので歩きにくくて……」

「手、よかったら使って」

目の前に差し出された手をまじまじと見つめる。

つまりこれは手を握っていいということだろうか。

こんな乙女ゲームみたいな胸キュンイベントが私に起こっているなんて夢でも見ているんじゃないかと思ってしまう。


少しの変化にもすぐに気づいてくれるのは、さすがこの世界のヒーロー様。

だけど、相手が違うんだってヒーロー様。



「天花寺様、そこまでしていただかなくても大丈夫ですよ?」

「俺がそうしたいだけだよ。手が嫌だったら腕を掴むでもいいから、ね?」

「……では、袖を少しお借りします」

根っからの優しい人で天然なんだろうけど、どうかこの現場を浅海さんに見られませんように。

修羅場突入なんて私は嫌ですからね。


なるべく早く浅海さんと天花寺は幸せになりやがってくださいませ。