「あまりこういった件には私は口を出したくはないのだけれど、花ノ姫同士での争いごとは控えるように」

私たちの会話を黙って聞いていた先輩である撫子の君こと小笠原征子様が、厳しい眼差しで瞳と英美李様を見遣った。

その隣でダリアの君……早乙女詩央里様がふわりと微笑みを浮かべて首を傾げる。


「浅海様、でしたかしら。先日お見かけしましたが、可愛らしい顔立ち方の男性でしたね」

「詩央里様!?」

「英美李さん、どうしてそこまで彼を嫌うのかしら。特待生である彼にとってここでの生活は不安なことが多いでしょうし、できれば同じ学年の皆様が力になってさしあげて」


あの詩央里様が浅海さんを気にかけることがおもしろくない様子の英美李様が顔を顰めて、下唇を噛みしめている。

雅様も笑顔が寒気をおぼえるほど冷たくて、気に入らないのが見てとれた。


「それに天花寺様たちとも親しいそうですね。それはとても美味し……いえ、目の保養になりますわね」

……今、詩央里様の本音がぽろっとこぼれかけた気がした。

もしかして詩央里様って、いやでも人の趣味は色々あっていいと思います。読者でも一部そういった嗜好の人もいたなぁ。


不服そうだったけれど、英美李様も雅様も反論することはなかった。

素直に従うとは思えないけれど、とりあえずは詩央里様たちのお陰でこの場はおさまった。