桃恋特別編〜後編〜
おい、大丈夫なのか?あんなやつ見たことあるか?
桃太郎の事を噂する鬼たち。しかし誰一人として、桃太郎に声をかけようとしなかった。
「お前らそれでも、鬼か?」
1人の大柄な鬼が桃太郎の元に駆けつけ、
桃太郎を抱き上げた。その瞬間桃太郎の頭のお面が外れてしまったのである。
その様子を見ていた1人の鬼が異変に気づいた。
「おい、あいつ人間じゃねえのか?」
その言葉を合図のように騒ぎ出す鬼達。
辺りは、騒然となり祭りどころでは、なくなった。
「道を空けろ」
桃太郎が人間だと分かった上で尚も助けようとする大柄な鬼。
しかし混乱する群衆をかき分け安全な場所に運ぶのは、困難をきたす作業である。
それでも彼は、この少年を助けたいと思っていた。
桃太郎は、誰かに抱かれている懐かしい感覚を覚えうっすらと、目を開けるとツノが1本しかない鬼の顔が飛び込んできた。
ギョッとする桃太郎…
気づくと桃太郎の体は、小刻みに震えていた。
「怖い思いをさせて悪かったな…あと少しの辛抱だ」
恐怖で満ちていた、桃太郎の心に光が差し込んだ。
おそるおそる目を開く桃太郎。
目の前に映るのは、さっきと同じ光景。
しかし桃太郎にもはや、恐怖という感情は、無くなっていた。
自らを犠牲にし、己を護ってくれている鬼に対し、疑問と感謝、そして自らの弱さに歯がゆさを感じていた。
「ありがとう…ところでおじさんは、なんで俺を助けてくれたの?」
「俺にも、お前くらいのガキがいるからな。ほっとけなかっただけだよ」
そう言って笑う鬼。
「…」
「おっ、そろそろ俺の住処だ」
そう言って彼は、洞窟に向かって手を振り出した。中から子供の鬼が出てきて手を振り返して来ている。
おそらくあそこが住処で間違いないだろう。
「父ちゃんおかえり」
「ただいま。くろべえ」
「父ちゃん、その子誰?」
父ちゃんと呼ばれていた鬼は、俺の顔を困った表情で見てきている…
これは、つまり名前を自分で言えって事なのか?
「俺は、桃太郎。見ての通り人間だ」
俺が名乗るとくろべえは、目をキラキラさせ、俺の事をまじまじみつめてきた。
「なっ…なんだよ」
「お前なんか弱そうだな」
初対面の言葉がこれである。
怒りがこみ上げてきた俺は、くろべえに殴りかかった。
しかし、ひらりとかわされぶん投げられる俺。
何度挑んでもくろべえには、勝てなかった。
「お前、強いんだな」
「まあな…毎日鍛えられてるからな」
それを聞いた桃太郎は、自分を助けてくれた鬼の元に駆け寄り自分も、鍛えて欲しいと頼み込んだ。
「おじさん、俺もおじさんのように強くなりたい。護りたいやつがいるんだ」
深々と頭を下げて頼み込む桃太郎。
「俺の稽古は、きついぞ。途中で投げ出す事は、許さぬぞ?それでもいいか?」
今までに見た事のない険しい顔で尋ねてくる鬼。
しかし、桃太郎に迷いなどもはや無かった。
「かまいません。俺に稽古をつけてください」
「覚悟は、出来てるようだな」
「はい」
桃太郎とはぐれた鬼姫は、鬼祭の会場に迷い込んだ人間の噂を聞き、悲痛な思いで唇を噛みしめていた。
浴衣が崩れるのもかまわず必死に桃太郎を連れて行った鬼を探す鬼姫。
そんな彼女の様子見た1人の鬼が声をかけてきた。
「鬼姫、お前何してるんだ?」
聞き覚えのある声に鬼姫は、視線を向けると鬼王がこちら見ている。
「父上こそ、何をしているのじゃ?私は、人を探していて忙しいのじゃ」
立ち去ろうとするする鬼姫。
「まて、その探し人とは、人間の事じゃなかろうな?」
心を読み取ったかのようにピシャリと鬼姫の目的を言い当てる鬼王。
ゾクッとして、振り返る鬼姫。
「やはりそうだったか…」
頭を抱え、うなだれる鬼王。
「やっぱりってどう言う事?説明してよ」
鬼姫は、鬼王に駆け寄り襟をつかみ激しく訴えかけた。
「…今まで母さんの話を、お前にして来なかったのは、母さんが人間だったからだ」
思わず手を離す鬼姫。
「…どっ…どう言う事?」
突然の鬼王の告白に鬼姫の頭の中が真っ白になった。
「ワシは、鬼ヶ島の掟を破り、人間と結ばれたのだ」
言葉を失う鬼姫…
「ワシも、一緒に探してやる。ただし、見つけ次第、記憶を消して人間の島に帰ってもらうがな」
「ありがとう…」
バシッバシッ…ドサッ
「桃太郎。お前の力は、その程度か?そんなんで想い人を護れると思っているのか?甘えるな」
「まだ俺は、戦えます。うおー」
バシッ
「まだまだ…」
ドサッ…
「やれやれ…根性は、立派だがまだまだ脇が甘いな。…それよりくろべえ、桃太郎に鬼の戦闘術を教えただろ?」
「こいつが、どうしても教えて欲しいて言うもんだからよ」
「バカヤロー。鬼の戦闘術は、危険だから人間には、教えるなと言っただろう」
そう言ってくろべえを殴る鬼。
「いってぇー。どうせ人間に習得なんてできねーよ」
目に涙を浮かべながら反論するくろべえを無視して鬼は、薬草を煎じ始めるのであった。
「何をしてるのですか?」
「桃太郎か、お前のために薬草を煎じてやったのだ、飲め」
差し出されたそれは、とても苦々しい色をしており、とてもお世辞にも美味しそうと思えるものでは、なかったのだ。
しかし、拒否することも出来ず桃太郎は
、おそるおそるそれを、口に含んだ。
口の中に広がるなんとも言えない苦味に桃太郎は、吐き出したい気持ちを抑え飲み込んだ。
「よく飲み込んだ。不味いだろ?しかし効くぞ」
「あっ…ありがとうござい…うっ…」
苦悶の表情のまま答える桃太郎。
その様子を見ていたくろべえが水持ってきた。
「飲めよ」
「悪い…」
ゴクゴク…
水を飲むごとに、口の中に広がっていたトゲトゲするような苦味が薄らいでいくのを感じ、安堵の表情を見せる桃太郎。
ほっとした桃太郎は、気が抜けたのかそのまま眠ってしまうのだった。
ガキーン…ガキーン…
金属同士のぶつかり合う激しい音に起こされ、そっと外を見る桃太郎。
そこでは、桃太郎を救ってくれた鬼と見た事のない大柄な鬼が戦っていた。
2人の戦いは、互角で勝負がつきそうに無かった。
…って鬼姫?
思わず飛び出しそうになる桃太郎を必死に止めるくろべえ。
「やめろ。お前が出ても足でまといになるだけだ」
「くっ…確かにそうかもしれねーけどよ。でも俺は、鬼姫を助けに行く」
そう言ってくろべえの制止も聞かずに桃太郎は、飛び出して行った。
「師匠。俺も戦わせてください。」
「ふん、足を引っ張るなよ」
やー!
くろべえの金棒を振り上げ大柄な鬼事鬼王に殴りかかる桃太郎。
「ふん、人間なんか相手にもならねーよ」
そう言って軽く金棒で受け止めようとする鬼王。
ガッキーン
鋭い音を響かせ砕け散る鬼王の金棒。
「…お前まさか、鬼の戦闘術を習得したのか?」
しかし桃太郎は、その問いに答える事は、できなかった。
バタッ
倒れる桃太郎。
「桃太郎」
駆け寄る鬼姫の目からは、すでに涙が滝のように溢れており、その場に居るものなら2人がただならぬ関係なのは、理解出来た。
「桃太郎しっかりせよ。私を護るのでは、無かったのか?」
鬼姫は、ポロポロ涙を流した。
「鬼姫…やっと会えたね…」
そこまで言って再び気を失う桃太郎。
「桃…太郎…」
うわぁーー
大声でなきさけぶ鬼姫に、鬼王は、優しく語りかけてきた。
「そいつは、疲れて寝てるだけだぞ?」
「えっ?」
顔を上げた鬼姫に師匠と呼ばれていた鬼も続けて説明した。
「こいつは、鬼の戦闘術の反動で倒れただけだ」
鬼の戦闘術とは、本来、鬼にのみ使える秘術でツノから全身に、力を送り一時的に力を数倍にふくれ上がらせる技である。
しかし、希に桃太郎のようにツノの力を使わずに使える者も存在する。
「そうじゃったのか…」
緊張の糸が切れた鬼姫は、安堵の表情を見せ再び泣き出した。
戸惑う大人達。
「桃太郎…ホントによかったよー。」
そして泣き疲れた鬼姫は、桃太郎と一緒にねむってしまうのだった。
目覚めた桃太郎と鬼姫は、鬼王の洞窟にいた。
「ここは?」
桃太郎が聞くと鬼姫は、少し曇った笑顔で答えてくれた。
「ここは、私の家だよ…」
何か隠してるような彼女の表情に疑問を抱きつつも、桃太郎は、聞くことができなかった。
「桃太郎よ、目覚めたか」
先ほど師匠と戦っていた大柄な鬼が何かの袋をさげて現れた。
「何しに来た?鬼姫は、渡さないぞ」
鬼姫を守るように、鬼王の前に立つ桃太郎。
その姿は、まるでお姫様を護る勇者のようだった。
「勇ましいな。鬼姫の婿に欲しいくらいだ」
鬼王の言葉に鬼姫は、顔を真っ赤にして反論した。
「ちょっ…父上。私は、まだ8歳なのよ。そう言うのは、早すぎ…」
まんざらでも無いと言うの反応に鬼王は、満足したような表情を見せ続けた。
「どうじゃ?娘を嫁にもらってくれぬか?」
突然の申し入れに戸惑う桃太郎。
「なっ…お父さん?てか嫁にって…」
思わず顔を赤く染め上げる桃太郎。
思わずにやけそうになるのを堪え鬼王は、提案をら出してきた。
「ここに、毒入りの団子がある。ひとつは、普通の団子。もうひとつは、食べると記憶が消える団子だ。もしもお前が、本物の団子を食べれたらこの島に住ませてやる。ただし、毒入りを食べたらこの島から出ていってもらう」
この時差し出した団子には、普通の物など存在しなかった。
そしてこの時すでに、鬼王の中では、2人を結婚させる計画が出来ていたのだ。
桃太郎は、鬼ヶ島での記憶を失い人間達の住む海の砂浜に放置された。
「父上…なぜ毒などと嘘をついたのじゃ?」
「あの少年を試したかったんだよ。ホントにお前にふさわしいかな」
それだけ答えると鬼王は、黙々とオールを漕ぎ続け何も答える事は、無かった。
そして8年後鬼王は、人間の町で暴れまわり、わざと桃太郎に退治されるのだが
それは、また別のお話なのでる…
おわり
おい、大丈夫なのか?あんなやつ見たことあるか?
桃太郎の事を噂する鬼たち。しかし誰一人として、桃太郎に声をかけようとしなかった。
「お前らそれでも、鬼か?」
1人の大柄な鬼が桃太郎の元に駆けつけ、
桃太郎を抱き上げた。その瞬間桃太郎の頭のお面が外れてしまったのである。
その様子を見ていた1人の鬼が異変に気づいた。
「おい、あいつ人間じゃねえのか?」
その言葉を合図のように騒ぎ出す鬼達。
辺りは、騒然となり祭りどころでは、なくなった。
「道を空けろ」
桃太郎が人間だと分かった上で尚も助けようとする大柄な鬼。
しかし混乱する群衆をかき分け安全な場所に運ぶのは、困難をきたす作業である。
それでも彼は、この少年を助けたいと思っていた。
桃太郎は、誰かに抱かれている懐かしい感覚を覚えうっすらと、目を開けるとツノが1本しかない鬼の顔が飛び込んできた。
ギョッとする桃太郎…
気づくと桃太郎の体は、小刻みに震えていた。
「怖い思いをさせて悪かったな…あと少しの辛抱だ」
恐怖で満ちていた、桃太郎の心に光が差し込んだ。
おそるおそる目を開く桃太郎。
目の前に映るのは、さっきと同じ光景。
しかし桃太郎にもはや、恐怖という感情は、無くなっていた。
自らを犠牲にし、己を護ってくれている鬼に対し、疑問と感謝、そして自らの弱さに歯がゆさを感じていた。
「ありがとう…ところでおじさんは、なんで俺を助けてくれたの?」
「俺にも、お前くらいのガキがいるからな。ほっとけなかっただけだよ」
そう言って笑う鬼。
「…」
「おっ、そろそろ俺の住処だ」
そう言って彼は、洞窟に向かって手を振り出した。中から子供の鬼が出てきて手を振り返して来ている。
おそらくあそこが住処で間違いないだろう。
「父ちゃんおかえり」
「ただいま。くろべえ」
「父ちゃん、その子誰?」
父ちゃんと呼ばれていた鬼は、俺の顔を困った表情で見てきている…
これは、つまり名前を自分で言えって事なのか?
「俺は、桃太郎。見ての通り人間だ」
俺が名乗るとくろべえは、目をキラキラさせ、俺の事をまじまじみつめてきた。
「なっ…なんだよ」
「お前なんか弱そうだな」
初対面の言葉がこれである。
怒りがこみ上げてきた俺は、くろべえに殴りかかった。
しかし、ひらりとかわされぶん投げられる俺。
何度挑んでもくろべえには、勝てなかった。
「お前、強いんだな」
「まあな…毎日鍛えられてるからな」
それを聞いた桃太郎は、自分を助けてくれた鬼の元に駆け寄り自分も、鍛えて欲しいと頼み込んだ。
「おじさん、俺もおじさんのように強くなりたい。護りたいやつがいるんだ」
深々と頭を下げて頼み込む桃太郎。
「俺の稽古は、きついぞ。途中で投げ出す事は、許さぬぞ?それでもいいか?」
今までに見た事のない険しい顔で尋ねてくる鬼。
しかし、桃太郎に迷いなどもはや無かった。
「かまいません。俺に稽古をつけてください」
「覚悟は、出来てるようだな」
「はい」
桃太郎とはぐれた鬼姫は、鬼祭の会場に迷い込んだ人間の噂を聞き、悲痛な思いで唇を噛みしめていた。
浴衣が崩れるのもかまわず必死に桃太郎を連れて行った鬼を探す鬼姫。
そんな彼女の様子見た1人の鬼が声をかけてきた。
「鬼姫、お前何してるんだ?」
聞き覚えのある声に鬼姫は、視線を向けると鬼王がこちら見ている。
「父上こそ、何をしているのじゃ?私は、人を探していて忙しいのじゃ」
立ち去ろうとするする鬼姫。
「まて、その探し人とは、人間の事じゃなかろうな?」
心を読み取ったかのようにピシャリと鬼姫の目的を言い当てる鬼王。
ゾクッとして、振り返る鬼姫。
「やはりそうだったか…」
頭を抱え、うなだれる鬼王。
「やっぱりってどう言う事?説明してよ」
鬼姫は、鬼王に駆け寄り襟をつかみ激しく訴えかけた。
「…今まで母さんの話を、お前にして来なかったのは、母さんが人間だったからだ」
思わず手を離す鬼姫。
「…どっ…どう言う事?」
突然の鬼王の告白に鬼姫の頭の中が真っ白になった。
「ワシは、鬼ヶ島の掟を破り、人間と結ばれたのだ」
言葉を失う鬼姫…
「ワシも、一緒に探してやる。ただし、見つけ次第、記憶を消して人間の島に帰ってもらうがな」
「ありがとう…」
バシッバシッ…ドサッ
「桃太郎。お前の力は、その程度か?そんなんで想い人を護れると思っているのか?甘えるな」
「まだ俺は、戦えます。うおー」
バシッ
「まだまだ…」
ドサッ…
「やれやれ…根性は、立派だがまだまだ脇が甘いな。…それよりくろべえ、桃太郎に鬼の戦闘術を教えただろ?」
「こいつが、どうしても教えて欲しいて言うもんだからよ」
「バカヤロー。鬼の戦闘術は、危険だから人間には、教えるなと言っただろう」
そう言ってくろべえを殴る鬼。
「いってぇー。どうせ人間に習得なんてできねーよ」
目に涙を浮かべながら反論するくろべえを無視して鬼は、薬草を煎じ始めるのであった。
「何をしてるのですか?」
「桃太郎か、お前のために薬草を煎じてやったのだ、飲め」
差し出されたそれは、とても苦々しい色をしており、とてもお世辞にも美味しそうと思えるものでは、なかったのだ。
しかし、拒否することも出来ず桃太郎は
、おそるおそるそれを、口に含んだ。
口の中に広がるなんとも言えない苦味に桃太郎は、吐き出したい気持ちを抑え飲み込んだ。
「よく飲み込んだ。不味いだろ?しかし効くぞ」
「あっ…ありがとうござい…うっ…」
苦悶の表情のまま答える桃太郎。
その様子を見ていたくろべえが水持ってきた。
「飲めよ」
「悪い…」
ゴクゴク…
水を飲むごとに、口の中に広がっていたトゲトゲするような苦味が薄らいでいくのを感じ、安堵の表情を見せる桃太郎。
ほっとした桃太郎は、気が抜けたのかそのまま眠ってしまうのだった。
ガキーン…ガキーン…
金属同士のぶつかり合う激しい音に起こされ、そっと外を見る桃太郎。
そこでは、桃太郎を救ってくれた鬼と見た事のない大柄な鬼が戦っていた。
2人の戦いは、互角で勝負がつきそうに無かった。
…って鬼姫?
思わず飛び出しそうになる桃太郎を必死に止めるくろべえ。
「やめろ。お前が出ても足でまといになるだけだ」
「くっ…確かにそうかもしれねーけどよ。でも俺は、鬼姫を助けに行く」
そう言ってくろべえの制止も聞かずに桃太郎は、飛び出して行った。
「師匠。俺も戦わせてください。」
「ふん、足を引っ張るなよ」
やー!
くろべえの金棒を振り上げ大柄な鬼事鬼王に殴りかかる桃太郎。
「ふん、人間なんか相手にもならねーよ」
そう言って軽く金棒で受け止めようとする鬼王。
ガッキーン
鋭い音を響かせ砕け散る鬼王の金棒。
「…お前まさか、鬼の戦闘術を習得したのか?」
しかし桃太郎は、その問いに答える事は、できなかった。
バタッ
倒れる桃太郎。
「桃太郎」
駆け寄る鬼姫の目からは、すでに涙が滝のように溢れており、その場に居るものなら2人がただならぬ関係なのは、理解出来た。
「桃太郎しっかりせよ。私を護るのでは、無かったのか?」
鬼姫は、ポロポロ涙を流した。
「鬼姫…やっと会えたね…」
そこまで言って再び気を失う桃太郎。
「桃…太郎…」
うわぁーー
大声でなきさけぶ鬼姫に、鬼王は、優しく語りかけてきた。
「そいつは、疲れて寝てるだけだぞ?」
「えっ?」
顔を上げた鬼姫に師匠と呼ばれていた鬼も続けて説明した。
「こいつは、鬼の戦闘術の反動で倒れただけだ」
鬼の戦闘術とは、本来、鬼にのみ使える秘術でツノから全身に、力を送り一時的に力を数倍にふくれ上がらせる技である。
しかし、希に桃太郎のようにツノの力を使わずに使える者も存在する。
「そうじゃったのか…」
緊張の糸が切れた鬼姫は、安堵の表情を見せ再び泣き出した。
戸惑う大人達。
「桃太郎…ホントによかったよー。」
そして泣き疲れた鬼姫は、桃太郎と一緒にねむってしまうのだった。
目覚めた桃太郎と鬼姫は、鬼王の洞窟にいた。
「ここは?」
桃太郎が聞くと鬼姫は、少し曇った笑顔で答えてくれた。
「ここは、私の家だよ…」
何か隠してるような彼女の表情に疑問を抱きつつも、桃太郎は、聞くことができなかった。
「桃太郎よ、目覚めたか」
先ほど師匠と戦っていた大柄な鬼が何かの袋をさげて現れた。
「何しに来た?鬼姫は、渡さないぞ」
鬼姫を守るように、鬼王の前に立つ桃太郎。
その姿は、まるでお姫様を護る勇者のようだった。
「勇ましいな。鬼姫の婿に欲しいくらいだ」
鬼王の言葉に鬼姫は、顔を真っ赤にして反論した。
「ちょっ…父上。私は、まだ8歳なのよ。そう言うのは、早すぎ…」
まんざらでも無いと言うの反応に鬼王は、満足したような表情を見せ続けた。
「どうじゃ?娘を嫁にもらってくれぬか?」
突然の申し入れに戸惑う桃太郎。
「なっ…お父さん?てか嫁にって…」
思わず顔を赤く染め上げる桃太郎。
思わずにやけそうになるのを堪え鬼王は、提案をら出してきた。
「ここに、毒入りの団子がある。ひとつは、普通の団子。もうひとつは、食べると記憶が消える団子だ。もしもお前が、本物の団子を食べれたらこの島に住ませてやる。ただし、毒入りを食べたらこの島から出ていってもらう」
この時差し出した団子には、普通の物など存在しなかった。
そしてこの時すでに、鬼王の中では、2人を結婚させる計画が出来ていたのだ。
桃太郎は、鬼ヶ島での記憶を失い人間達の住む海の砂浜に放置された。
「父上…なぜ毒などと嘘をついたのじゃ?」
「あの少年を試したかったんだよ。ホントにお前にふさわしいかな」
それだけ答えると鬼王は、黙々とオールを漕ぎ続け何も答える事は、無かった。
そして8年後鬼王は、人間の町で暴れまわり、わざと桃太郎に退治されるのだが
それは、また別のお話なのでる…
おわり