「なあ、こっち向けよ?」


中学のときのことを巡らせていると、ハッと“今”に戻された。


「なに考え事してんの?俺以外に気になる男でもいんのかよ?」


余裕そうに告げる言葉に、わたしは自分の耳を疑ってしまう。


俺以外って...!!


「わ、わたし、そもそも望月くんのこと、気になってなんか...!!」

「洸」

気になってなんかない。

最後を遮られた。


「...え?」


「二人のときは、洸って呼べよ。晴香」


「な...っ」


なんの遠慮なしに人の下の名前を呼んでくる。


実は、わたしを晴香って呼ぶのは親くらいだ。


クラスで一番仲のいい紗由理がハルって呼ぶからか、

他の子からもハルとかハルちゃん、ハルぽん、ハルちんって呼ばれてる。


だからそんな迷いなく“晴香”なんて告げられると、なんだかものすごくくすぐったい気持ちになってしまう。