「赤くなってなんか!」


口で抵抗しながらも、パチリと吸い込まれそうな茶色い瞳と目線が交わって、頬がますます高潮してくるのを自覚する。


頭なんて撫でられたら、誰だって照れるに決まってるじゃないか。


それがたとえ偽物王子だとしても。


「お前もしかして、男経験ねえの?」


確信めいたように質問されて、わたしは黙りこんでしまう。


口を開けばドツボにはまりそうで、何も言えない。


だけど、もし今まで付き合ったことがあるのならば、それを言えばいい。


なにも言えないってことは、言うことがない=経験がないってこと。


紗由理のいうとおり、現実を見て、中学のとき告白してくれたあの人と付き合うべきだったのかも。


あの人、今思えばいい人だったし。


あのころは、今より夢見ていたから...。