俺は補習が終わったあと、新幹線で実家に帰った。
明日、8月31日はーー紲が亡くなって、一年が経つーー。
明日の朝一に一人でお墓参りをして、そのあとまた新幹線で9時に学校に着くように向かう。
前回帰省したのはゴールデンウィークだ。
約4ヶ月ぶりに会った両親はとても元気そうだった。
「洸、おかえりなさい」
「おかえり、洸」
父さんと母さんふたりが嬉しそうにそう迎えてくれて、俺は思わず泣きそうになった。
紲は食べ物のなかで唯一グリンピースが嫌いだった。
だから、今までグリンピースが食卓に並ぶことはめったになかった。
でも、俺は好きだった。
夕食のおかずの1つに、グリンピースいっぱいのエビチリが並んだときは、切ない気持ちと嬉しい気持ちが混ざったなんともいえない感情になった。
母さんが手をかけて作ってくれた料理は、すべて美味しかった。
「洸」
就寝しようと思ったら、父さんに呼び止められた。
静かに俺の名を呼んだので、少しドキリとした。
なにを言われるのか正直気が張った。
「大学を卒業したら、お前を会社に入れたいと思う。
お前が頑張ってること、父さんは心からうれしく思う。
...だか、今はお前の好きなことをしなさい。
昔よく反抗していたことが、懐かしく思えるくらいだ...。
紲のぶんまで精一杯生きて、精一杯、自分の人生を歩むんだ」
最後におやすみ、と付け加えて、父さんは寝室へと入っていった。
胸がぐっと締め付けられるとともに、なにか熱いものが込み上げてきた。
紲のことを思いながら、眠りについた。