テスト最終日が終わって...。
まず、無事全教科受けることができてよかった。
そもそも受けられなかったらその時点で留年確定だからな。
晴香もかなり好感触なようで安心した。
あんだけ真面目にしてたんだから、大丈夫なことは信じてたけどな。
晴香がくれたチーズケーキはすごく美味しかった。
わざわざ買ってくるとか、可愛いやつ。
拓海とふたりで会ったっていうのは、気にいらねえけど。
まあ、昨日拓海と和解できてよかったな。
晴香のおかげだ。
......はあ、離したくない。
そんな想いが抑えきれず、自販機に行こうとした晴香を後ろから抱き締めた。
すると彼女は“どうして”と言った。
“どうしてこんなことするの”、と。
そんなの決まってるだろ。
俺は、たった一人、お前のことがーー
その言葉を伝えられたら、どんなによかっただろう。
伝えたかった。
ほんとは言いたかったんだ。
...だけど、どうしても思い止まってしまった。
『高校に入ったら素敵な恋がしたいな~!』
紲は瞳をキラキラさせてそう言ってた。
きっと描いてる物語があったんだろう。
そして、きっと紲ならそれが叶えられた。
...でも、それを俺が奪ってしまった。
俺は......俺が......
紲がしたかった恋を、していいのか...?
勉強や留学などは、親の跡を次ぐための言わば修行の一つだ。
...そうだよ、俺はもっと、上を目指さないと。
はやく紲に追いつかないと。
恋愛なんて、してる場合じゃないーー。
“忘れてくれ”
ーーそんな曖昧な言葉で、お前を傷つけた。