やっぱり大毅はカッコよかった











桜はとうに散っている





もう梅雨入りの時期だから

そんなことは、当たり前








だけど今日は晴天で

3月の寂しい季節を思い出すような










優しく冷たい風が










グラウンドを吹き付けては

葉桜のような緑の葉っぱを飛ばしている










それに呑まれながら

試合をしている大毅は本当に







遠くから見ても

輝いていた












引退試合は無事に

2-0で勝った







その2点は大毅は

シュートしたものだけど










多分、みんなが繋いでくれたからって

言うんだろうな









彼女だった頃これ見たら






今頃、走って

大毅のとこにいっただろうな…







それに試合中だって







隙あらば大毅、大毅って叫んだだろう










たけどもう違うし

大毅の隣には可愛いマネージャーがいる








休憩の時に渡される

スポドリ、タオル、サポーター




全部私の見たことの無い優しい笑顔で

受け取っている









悔しい、私はあのマネージャーの子に

負けたんだ……










「よし、徹!帰ろ」

「え、あぁ」

「帰りにあそこのパフェ食べよ~」










このまま大毅に会わずに帰りたくって

徹を急かしてしまった










ズカズカと歩いて

もう店の前まで来てしまったけど












「あ、のさ……勝手に徹の手引いてきたけど大毅と話したいこととかなかった?」

「特にない」

「そっか!ならいいんだ!」










徹との沈黙は

決して居心地の悪いものでは無い









だけど今はあまり好ましくないなぁ








そう思った矢先、

私の感情を読み取ったかのように







徹が口を開いた







「大毅とマネージャー、付き合ってないと思う」

「え?なんで?」

「そういう様子じゃなかった」

「なにそれ」

「それに簡単に彼女作るわけねえだろアイツが」







え?

さっぱり意味がわからない






私以外に好きな人が出来て、

それがあのマネージャーの可愛い女の子で







私と別れて付き合い始めた











それが1番筋の通っている話じゃない?










「悪ぃ、やっぱ今の忘れてくれ」

「え、うん、分かった……」









全然わからないし

納得いかない











「それに、大毅があのマネージャーと付き合ってるって口に出したわけでもない」

「うん」

「なら、別に気にしなくてもいいと思う」

「そうだね」








これ以上聞いても

無駄な気がするから








やめておこう












もう、大毅が誰と何してようと

私が口出しする権利はないし







それで一喜一憂していたら

心臓がいくつあっても足りなさそうだ










もういっそ、

全部忘れられたらいいのに











「私が、もっと強ければいいのに」








小さく呟いた声は








「ん、なんか言ったか?」

「何も言ってないよ」
















誰にも届かない