はぁ…





あれから私はさらなる壁に

ぶち当たっている







「なに悩んでんだよ」

「これ、」





徹に聞かれて

睨めっこしていたケータイの画面を見せた











【消去】or【キャンセル】










「もう、やっぱり消せないよ」

「美咲、俺が消してやろうか?」

「んー、頼もうかなぁ…」






どうしても私には

消すのボタンを押す勇気はない。








「かわりに俺の自撮りを送ってやるよ」

「もう、ほんと徹はナルシスト。」









まあ、確かに…

徹は中学時代からとにかくモテる





バレンタインにら大量のチョコ


クラス替えの度にラブレター


卒業の時はボタンで紛争…










そんな、モテモテなやつと

幼なじみやってる私って

結構すごくない?











オマケに徹は

優しいからさぁ…





「消してもらおっかな…私じゃ無理だし」

「おう」

「写真って残したままにしたら、やっぱり重いヤツかな?」

「それは、別れ方によるな」








振られてからだって

やっぱり極力嫌われたくない







私のこと眼中になくても

一方的に気にしてしまう










私だけがまだ

大毅のことが忘れられないから












「あ、でも連絡先はこれから必要だろうしおいとけよ」

「うん…」

「それと、美咲が辛くなるんなら写真は消せよ」

「わかった」








とは言ったもののやっぱり

どうしても消せない









辛くなるかもしれないけど

消したら全部なくなる気がするし





忘れたくない思い出も

消えてしまいそうだから






「写真の中の私と大毅、こんなに笑ってるのにどうしてこうなったんだろ。」

「どうしてだろうな。」










この写真のように

笑い合えていた頃に戻りたい









戻ったらそのまま

ずーっと時を止めてしまいたい








もう、動かさずにずっとそのまま

あの時間が続けばよかった








「何か知らないの?」

「俺は何も聞かされてねえよ」

「でも、私には言えないようなこと大毅にだってあると思うし…ほら、他の女の子がいるとかさあ、大毅からほんとに何も聞いてない?」

「ひとつも聞いてないな」

「そーだよねー…」










てか、徹の返事薄っぺらい







まあ聞いて貰ってる身だから

文句は言えないけどね








「徹なら、別れた彼女に写真消してもらいたい?」

「別れ方によるな」

「そーだよね」










大毅は、私以外に気になる子がいるから

別れよって言ったんだ







それでも、別れたくなかった

浮気されるのも嫌だけど








いまはそれでもって思ってしまいそうで

なんか怖いや








「大毅はお前のこと嫌いになって別れたわけじゃねえと思う。だから」

「消さなくてもいい?」

「おう、ってか最後まで聞けよ」

「ごめんごめん、」






やっぱり徹は優しいね






薄っぺらーい生返事するけど

私のことちゃんと気にかけてくれる








「美咲、明日サッカー部試合だろ?応援どーすんだよ」

「どうって、行けるわけないよ…」







まともに顔見れそうにないし

泣きそうだし






応援しながら泣くのもね…










ましてや可愛いマネージャと大毅が

仲良さげに話してるの見たらもう



彼女じゃないのに

嫉妬してしまいそうで、怖い。











それに、大毅のチームのメンバーさんは

私たちが別れたこと知ってるかな?








知ってても知らなくても

気まずいし、いつも通りなんて不可能だ










「俺は、行くぞ」

「え?」

「大毅は俺の親友だし別に俺が応援したって悪くねえだろ?」

「まあね」

「だから、美咲はその付き添いで来りゃいいんだよ」








優しさが滲み出ていて







「じゃあ行くよ」







YES以外の返事はできなかった