「あのさ彼女と別れたんだ、俺。」

「え?」







そんな話を聞いたのは







真央にちょっとだけ怒られて

すごくすごく心配もされて









話を真剣に聞いてもらってから

一週間くらいたった頃のこと








「い、いつ別れたの……?」

「んー、1ヶ月くらい前かな」

「ど、どうして話してくれなかったの?」






それは……と口ごもる徹は

どこか悲しそうだった








いつだって徹は

私に隠し事なんてしたことないし

嘘だってついたことがない







ということは、

言わなかったのではなく









私が言えないようにしていた…の?








「ごめん、私が言えないようにしちゃったのかな」

「え、いやそういうんじゃないんだけど」

「うん」

「大毅と色々あった美咲に負担かけるのは良くないかなって…ごめん、話さなくて」

「そっか…私こそごめんね」








やっぱり徹はいつだって

私のことを一番に考えてくれる









それなのに私は

徹のこと全然考えてなかったな








「ねぇ、なんで別れたの?もしかして、徹から振った?」

「いや、振られた」

「え!?」







いつだって、告白されるのもフるのも

徹だったのに








その徹がフラれるって

一体全体どういう経緯なんだ…








「徹、彼女に何かしたの…?」

「いや、何もしてない」

「じゃあ、」

「俺が、あいつをちゃんと見てなかった。それだけだ」









イマイチどういうことか分からないけど







徹は普通に彼女のことも

大切にしてたと思うんだけど……








「そっか」







簡単な言葉しかかけてあげられない










深く追求しない方がいいような気がして

最後までは聞けなかった










「もうすぐ文化祭だな」

「そうだね、徹のクラスはカフェだっけ?」

「おう」

「徹はイケメンだからモテそうだな。また人気出ちゃったりして」








顔は、ニコニコしているけど

瞳の奥は悲しみに満ちた色をしている








「お前のクラスはなんだっけな」

「私のところはクレープだよ」

「じゃ、食いにいくわ」

「わかった、私は前日準備をあんたりしない分、長く店番するからまってるね」








あ、あれ……?









「と、徹…?」

「あ、なんか言ったか?」

「文化祭、クレープ食べに来てくれるの待ってるねって話」

「あぁ、それか」










私、徹が何考えてるのか

全然分からないよ……










「よしっ俺、決めたわ」

「え?」

「文化祭終わったら後夜祭あるだろ?」

「そうだね」







毎年カップルがたくさん成立して

すごく賑わうイベントだ







「そん時、俺告るわ」

「え!?好きな子いたの?」

「まあ、結構前から。本人は全く気づいてないけどな」








徹にも、そんな相手がいたんだ

何年も幼なじみやってるけど






初めて知ったな








「俺が、そいつのことばっかり見てたから、彼女に振られたんだ。」

「そ、そうなの……?」

「よく考えれば失礼な話だよな。彼女の前で別のヤツのこと考えるとか」







私には否定も肯定もできない









「だから俺、当たって砕けるわ」

「徹なら、砕けないよ。大丈夫だと思う」

「美咲、今日はやけに無責任だな」

「む、無責任かもしれないけど…そんな気がする」













徹なら、大丈夫だよって

心からそう思えた気がした