それから、

鬼のような昼練は始まった








仕切っているのはバレー部の

佳奈ちゃんと咲希ちゃん









二人とも情熱的で

活気に満ち溢れている










「よしっ、美咲ちょっと後ろ下がって」

「え、うん」

「そのままトス上げて」

「わかった!」









私はよくわからないまま

S(セッター)っていう

ポジションを任された










任されたって言っても

そんな大それたことじゃない









S(セッター)っていうのは

普通なら、



1番うまい人がやるポジションらしいけど








今回はクラスマッチで

そこら辺は適当みたい……








それでなんで私になったかって言うと

理由は、2つある





1つ目は、うちのクラスのバレー部は

二人ともレフト。





WS(ウィングスパイカー)っていう

ポジションで、S(セッター)ではない








つまり、S(セッター)の役割をこなす

バレー部がいないのだ










2つ目は、単純に私の背が高いから






って言っても165cmで

バレーの方に出る女子の中では






少しだけ高いってはなし…








だから、バレー部から見たら

全然高くないと思うけど








まぁ、でも







「美咲、そのままダイレクト!」

「え?」






バレーの専門用語は全然分からない






これもちょっとは

勉強しないといけないやつだよね







みんな本気だし

私だけやらないっていうのは悪い









それに私も勝ってみたいし










「ダイレクトっていうのはトス上げずに美咲自身がボールを相手コートに落とすってことだよ」

「そうなんだ」

「うん!なら今のもっかいやってみよ」








ど素人の私にも

怒らずちゃんと教えてくれる








私たちの息は

結構合ってて、団結できてると思う











「お、バレー出る方の女子も昼練か?」

「そうそう!絶対勝ちたいじゃん!バスケ出る男子も昼練?」

「俺らはマジでやんねぇとやべえからな」















うちのクラスは

バレーもテニスもいい感じだと思う







テニス部では上手い方の

真央と






バレー部のエースの咲希ちゃんに

小学校からバレーをしてる

佳奈ちゃんがいるから










それに比べて……









「バスケ部何人なの?」

「それが、1人も居ねぇんだ」

「え!マジで!?」








そう、うちにバスケ部はいない

つまり全員が素人で初心者







まぁ、少々運動神経がいい人とか

バスケ好きならいるけど








「隣のクラスのバスケが強いらしいぜ」

「あー、徹くんがいるんだっけ?」







また、男子の質問に

誰が答えた








「そうなんだよ、バスケ部のキャプテンが隣のクラスに居んだよ」

「ならバスケは、負けても仕方ないね。サッカーに期待しよ」









はぁ、溜息をつきながら

頭を抱える男子に容赦ない一言だ










まあ、確かに

うちのクラスには……






何度も言うが

サッカー部のキャプテンの大毅がいる










それには絶対的な信頼がある

男子からも女子からも







大毅は、うちのクラスの

中心的なメンバーだし








期待にだって

きっと応えてくれるだろうから









「よしっ、じゃあ練習の続きしよっか」









咲希ちゃんの良く通る声で




男子はバスケの昼練

女子はさっきの続き








それぞれが今できることを

やることになった