『サキ先輩今日いいですか』
『いいよ』
その短い会話で彼とのトーク画面は埋まっている。
彼には彼女がいるし、私たちの間には愛とかそんなもんはない。所詮、体だけの関係である。要するに私は彼の浮気相手だ。
ただ。
ただ、厄介なのは。
「別れちゃえばいいのに」
私のこの醜い気持ちだけだった。
『私たちの間には愛とかそんなもんはない』と言ったけれど、それは少し違う。私が彼に一方的な思いを抱いているのである。
ひょんなことから彼を好きになって、でも彼には彼女がいることを知っていたから、思いだけ伝えてこの気持ちを忘れようと思った。
でも。
「あんた、俺とシてみない?」
彼は右の口角をあげながら言ってきて。
ああ。バカな私。かわいそうな私。
彼女がいるのはわかってるのに、『この気持ちの最後の思い出に』とかなんとか言い訳して、いいよ、と私は言ったのだ。
当然、彼への気持ちを忘れられるわけはなく、寧ろ想いは膨らみ、ただ独占欲だけが大きくなっていったのだ。