そう。

すっかり、この世界は変わってしまったのだ。

恋人を待っていたあの頃は、遠い昔の出来事だった。

草原の向こうに、廃虚のビル郡が夕闇に黒々と浮かびあがっていた。

昔、宙港があったあのあたりには、今、動く物はいない。

変わってしまったのだ。

なにもかも。

少女は、とぼとぼと歩きだした。

今では住み慣れた自分の街に、帰るためだった。

『誰の子供だか知らないけど、堕ろしたほうがいいよ』

声は、なおも少女の頭の中にひびいた。

「なんでそんなこというの?」

少女は、姿無き相手に語りかける。