少女は、ぐっと拳を握った。

気のせいか、指先の感覚が、にぶい。

もう、神経が、狂っているのだ、と思った。

「あたしは、あのひとの子供を産むんだ。だから、そんな、気楽にへらへら笑ってなんかいられないのよ」

若者は、声を上げて笑った。

「なぁんだ。そんなことか」

その態度が、少女には気に食わない。

「男なんかに、何がわかるの!」

「確かに、こればっかりは、わからない」

「だったら、余計なこと、いわないで」

若者は、急にまじめな顔になって、少女の瞳をのぞきこんだ。

「大丈夫さ」

少女は、めんくらう。

「なにが?」

「子供はちゃんと産まれるよ」