少女は、かぶりを振った。

「だめ。もうじき、あたしも変化してしまう。獣になって、こんなこと、考えられなくなってしまうんだ」

少女は、若者の眼前に、緑色に変わった指先をかざした。

それは、水彩絵の具で染まったように、手の甲のあたりで肌色に滲んでいる。

昨日は、指の又までだった。

明日は手首まで染まるだろう。

そして、次第に、人間のものではなくなってゆくのだ。

「それならば、それでもいいじゃないか……」

若者は、優しく笑った。

「嘆いても、笑っても、避けられない運命ならば、幸せな気持ちでいたほうがいいに決まってる」