若者はくるりと振り向いた。

少女は、悲鳴をあげた。

それは、あの、ネプチューンに抱かれたはずの、恋人だった。

宇宙船に乗って、遠くへ行ったまま還らなかった、あの、愛しい恋人だった。

少女は、飛ぶようにかろやかに、恋人の傍らへ移動し、その体を力いっぱい抱きしめた。

そうすることで、今までの全てが、夢と消えてくれたら、と必死の思いで願った。

しかし、そんなことがある筈はなかった。

依然として、少女の指は緑色に変わっていたし、かき抱いた恋人の背には、ふさふさとしたたてがみがあった。

これは、紛れもない、現実なのだ。

でも、今、ここには、あれほど待ちこがれた恋人がいる。

待って、待って、待ちわびて、気が狂うかと思うほど待ちこがれた恋人が、ここにいるのだ。