勿論、母にも、この異変が何に起因するものであるかなど、わかりえる筈がなかったが、母は、こう答えた。

「戦争かしら……」

母の世代には、学校で習った戦争という記憶があった。

戦争が起こると、爆弾が空から落とされるのだ。

なんともいいかげんな知識であった。

「事故よ。きっと!」

おおかたの揺れがおさまると、我に返ったのは、少女の方が先だった。

少女は、あわてて外に飛び出すと、もうもうと煙が上がっている宙港の方に向かって駆け出した。

街中が、あわてふためいていた。

思えばその日から全てが狂いだしたのだ。

少女は、顔を洗っている途中だったのを思い出し、水でびしゃびしゃになった下半身をぱんぱんと手で払って、空を仰いだ。