ある日、少女は、自分の体の変調に気づいた。

指先が、うす緑色になってきたのである。

そして、ふつうの食物が欲しくなくなってきた。

さすがに、自分の身にふりかかると、ショックが大きかったので、これはどうしたことかと、針師にたずねた。

「いまさら、あわてることもなかろう」

針師は、超然としてそう言っただけだった。

たしかに、そう言われてみれば、珍しいことなどでは、決してなかった。

変調は、むしろ、若い者から順に現れる。

少女などは、遅い方かもしれなかった。

針師の老人にしてみれば、そんな例を、うんざりするほど見てきたし、また、少女にしても同じだった。

ただ、少女が心配なのは、自分が変わってしまっても、子供が産めるだろうか、ということだった。

恋人のわすれがたみである、愛しいこの子だけは、立派に産んであげたかった。