「きめつけないでくれ!」

「だって!」

サブローは、興奮した少女を、力任せに組み伏せた。

「俺の女房は、鳥になって飛んで行った。それはもう、幸せそうに大空をはばたいて。獣になることが不幸だなんて、きめつけないでくれ」

少女は、握りしめていた針を、ぽろりと落とした。


そうだ。


何が幸せで、何が不幸かなんて、わかりはしない。

たとえ、本人だって、わからないかもしれないのだ。

そう思うと、急に、ばかばかしくなった。

こんな狂った世の中で、まじめに物を考える方が間違っているのだ。