「清水 亘」
「・・・」

「おい清水?」

出席番号が6番まで来たところで、テンポが止まった。

「・・・ん」

そう低い声で短く応えると、清水くんはさっさと教室を出ていった。

「いるなら返事しろやぁ」

先生のリアクションに教室はどっと湧いたが、私には笑えなかった。
態度が良いとは言えない。

でもあれが清水くんだ。
金子先生も知っている。

窓際一番後ろの席の彼は、私や紗季と3年間同じクラスの人だ。
これまで話したことは一度もない。

「かねっぺ含め最高のクラスと思ってたけど、あいつがいたとは。んー」

自身が座るイスを後ろに傾け、後ろの席の私に近づいて紗季が話した。
かねっぺとは金子先生のことだ。
先生本人公認の愛称。

「私は悪い人とは思わないけど・・・?」
「なに、清水のこと何か知ってるの?」

食い気味で紗季が聞いたことに私が全然と首を振ると紗季は笑った。

「おい横山。今年こそ静かになると思ったがーー」

金子先生が紗季を注意する。
紗季は笑い声が大きいからすぐ叱られる。