「…ッ……ゥ…」

「柚姫…もう大丈夫?」

柚姫は頷いた。

「どうしたんだよ……急に…」

俺は気になって仕方がなかった。

『もう大切な人を失いたくない。』

なんなんだろう……。よくわかんないけど………。

「………ごめん…。帰るね…。」

ドアを抜ける前……。

柚姫を抱き締めた。

「俺に言えないこと…?」

……………………沈黙が続く。

何で何も言ってくんねぇんだよ…。

「…ごめん。」

そう言って、俺の腕を抜けて早々と階段を降りていった。

「……柚姫…。」

小さく呟いた俺の声は誰にも聞こえることなく闇の中に消えていった。

柚姫……話せることなら、話して欲しかった。

俺は柚姫にとってのなんなんだろう…………。

気力がなくなる俺。

きっと今、柚姫を追いかけても意味がない。

そう思うんだ。

だから、行かない……。それが、柚姫の為にもなるから……。

『~♪~¶』

「……はい。」

『和?』

電話の相手は尋だった。

『今、柚姫と一緒か?』

「…柚姫はもういねぇよ。」

『いねぇ……って?』

「大切な人を失いたくない………そう言ってた…。」

尋は少し黙ってからまた話を始めた。

『………和、今日って何日?』

俺はカレンダーを見た。

「えっと…5月……24日…だけど。」

もう、柚姫と会って2ヶ月だ。

………………………………………

『…そっか……。』

尋が口を開いた。

「何か知ってんのか!?」

柚姫があの状態なんだ…………。

尋に聞くしかない。

「今から学校に戻ってこい。」

電話を切ってすぐ自転車で学校に向かった。