「地味子スポーツ経験は?」


「体育の授業でなら…」


「得意競技は?」


「得意とは…?」


「成績は?」


「……2です」


そして間を置くこと数秒。


「壊滅的だな」


心底私を可愛いそうな目で見てくる長谷川君。


「言われなくてもわかってるので、言わないでください!」


私が運動音痴なのもあるが、神様は長谷川君にニ物三物もあげすぎなのだ。


「誰にだって苦手な物くらいあります!」


「はいはい」


「それこそ、長谷川君は苦手な物ないんですか」


こちらも反撃に出ようと、『相手の弱点をあぶり出そう』作戦で対抗する。


「あー…、あれかな」


長谷川君はそう言いながら、前方を指差した。


私も視線を長谷川君からその方向へ変えると、そこに見えたのは、

「花屋さん?」


街中にある小さな花屋さんだった。


長谷川君が苦手なのってお花?


「花っていうか、甘い匂いが嫌い」


「匂いですか?」


「そ。体育館とかに来るやつって結構香水とかきつめの柔軟剤付けてるやつ多いんだよな」


たしかに、うちの学校のカースト上位の女子生徒たちは香水とか付けてる子とか多いかも。


でも、柔軟剤もってなると相当だよね。


そういえば、私の家も柔軟剤はお花の香りのを使っていたような、


「私のはどうですか?」


ふとそんなことを思いつき、自分の袖もとを長谷川君に向けた。


「…」


一瞬なんだか、長谷川君が戸惑ったような表情を見せた気がしたが、気のせいだろう。


そして、袖に長谷川君の鼻先がくっつくかくっつかないかのところで、少しの間沈黙が流れる。


目を閉じて、袖元に顔を近づけている長谷川君の横顔はやはり整っている。


目を閉じているだけで絵になるとか、本当にイケメンな人ってすごいんだな。


と、心の中で感心していたが、


「…」


またもや問題が発生した。


長谷川君がいっこうにその状態から動く気配がないのだ。