ついこの間までは文化祭の役委員で忙しくて、なかなか勉強に本腰を入れられていなかった。


しかし、勉強に集中できなかったのにはもうひとつ理由がある。


保健室で長谷川君に言い放った言葉を思い出してしまったのだ。


『わらしの気持ちなんて知らないくれに…』


『なんでキスなんかしたんですか』


今思い出しただけで顔から火が吹き出そうなほど顔が熱い。


こんな私でも、長谷川君に対して以前とは違う感情を抱いていることに気づいていた。


事故とはいえあのような事が起きた後だというのに、文化祭であんなことをされたらもう、意識せざるを得なかった。


でも、これが好きって気持ちなのか、実はまだ分からない。


友達の少ない私にとって、これだけ話したことのある人は稀だし、


もしかしたら、そういう意味での他の人とは違う感情を抱いているのかもしれない。


なんて言ったって上地実子17歳。


生まれてこの方恋愛なんてしたこともしたいと思ったこともない。


しかもそれが長谷川君となれば好意抱くより先にライバル心が優ってしまうのだ。


私にだってプライドがある。


好き云々より勉強で、テストで、長谷川君から1位の座を奪い取らなければいけない。


だから、今はとりあえず勉強!


「…よしっ」


そう意気込み、それから数時間私は図書室にこもって勉強に勤しんだ。






翌日もいつものように図書室に行くと、いつもの一番窓側の席に着く。