「昨日はせっかく聴かせて頂いた新曲のメロディーにインパクトが無いだなんて言ってしまって…」

「いや、ホントの事だから別に謝んなくていいよ」

「インパクトが無いんじゃなくて、
平凡とか無難とかって言うべきでした…」


「それ、フォローになってねぇし」

「怒らせるつもりは無かったんです」

「別に怒っても 落ち込んでもないよ」

「そうやってずっと携帯ゲームから目を離さないじゃないですか」

「 … 」

「昨日だって何度もラインしたのに無視するし」

朝、未読100で返事する前に嫌んなったんだよ。

「ライン、工夫したのに」

工夫?
1文字ずつ送信するのが工夫?

「僕が言った一言で、もう会ってくれなくなったらどうしようかって思って…」


女子か!
彼女か!


「そんな時は美味しい物でも食べて元気になりましょう!
ほら、
これキイナさんが好きな“里見屋のカツサンド”です♡」

ね、
と首を傾けて中谷はカツサンドの紙袋を差し出した。

用意がいいね。
腹減って来た所にこれだから太刀打ち出来ない。


いつもこうだ。
いつもこんな風に俺の機嫌が損なわれても
“許してもらえる前提”で話は進んでく。

中谷ペースの緩い罠に俺はいつも踊らされてる感じがする。