「波木 いなとさん、
昨日は大変申し訳ありませんでした!」

「何、本名でいきなり…
いつも “キイナ” って芸名で呼ぶくせに」






“なみき いなと”
間の文字を取って “キイナ”
路上でギター片手に歌っている時にスカウトされて、
以来、社長が俺の芸名をそう決めた。



マネージャーの中谷が控え室に入るなり駆け寄って来た。
途中側に有ったゴミ箱につまづいて、
奴の長い足がコケる寸前で立ち直るのはいつも見慣れたお決まりのパターン。

長身でイケメン、マネージャーのくせにマイペース。
言っておくけどこいつは何か普通と違う。

いや、
この男のそもそもの基本が普通・一般とズレている。
俺に言わせたらどんなに叩かれても
ダルマのように起き上がる特殊能力を持つ宇宙人にしか見えないが、



若いのにやり手マネージャーだと業界ではもっぱらの噂。