家に
入ろうとした時

後ろから
おばあちゃんに
肩を叩かれた



楓!
あれ
咲和じゃない?



は?



家の先の
道路を
まっすぐ見ると

黒いロングコート
を着た人影が
こっちに向かって
歩いて来ていた



おばあちゃん!
あれ
おかーちゃんだよ!!



アタシと
おばあちゃんを
見つけた途端

おかーちゃんは
走り出した

そんな
細い踵のブーツで
走ったら
危ないから!

あ!
もーほら
ずっこけてるしー!

それでも
おかーちゃんは
夢中で走って

何だか
いつもの
おかーちゃんと
様子が違う



かえちゃん!!
どぉーしょー……!!



おかーちゃんは
ワーッと泣き出した




咲和を中まで
連れて来て
ちょうだい



おかーちゃんは
足が
おぼつかない
くらいに

動揺していた


おばあちゃんは
黙って

おかーちゃんに
葛湯を出した

おばあちゃん手製の
甘くて
美味しい
我が家の葛湯



葛湯…久しぶり…
美味しい……



おかーちゃんも
かつては
ここの家で
毎日を過ごして

アタシと
同じく
高校生だったり
してたんだよね



おかーちゃん
何があったの?



かえちゃんの
父親がね………

………いなくなったって



え?!
どういう意味??



あの人
死ぬ気かも……

遺書書いて
行方不明だ
って



おかーちゃん!


アタシの父親

だれ?



アタシは

おかーちゃんの
目を見据えて

今こそ

本気で

聞き出すつもり

心の準備は

出来ている