打ち合わせが長引いて
帰り道が暗くなると

沢井さんは
自分の車で
送ってくれる



あー
楓ちゃん

今日は
助手席っ!




ドキッとする


ただ単に
いつも座らせてもらう
後部席が
荷物でいっぱいで
乗れないだけなのに



あー…
沢井さん…

今日は地下鉄で
帰ります……



何言ってんの!
もう10時過ぎて
危ないから!

さ、早く!



促されるままに
乗り込む

ここは

奥さんの
指定席でしょう…?









楓ちゃん
彼氏いないの?



えっ?!



だって
毎日こんな時間まで
こんなおじさんと(笑)

面倒くさい
仕事の話じゃ
つまんないでしょ?



いえ
アタシ
母の仕事手伝うの
好きでやってますから…



…それより
沢井さんこそ…

毎日遅いんじゃ
奥さんに
怒られませんか?



怒られないよ
ま、
娘と遊べないのが
残念だけどね




アタシ
いきなり凍りつく



……子供って
かわいいものですか…?






かわいいよ
めちゃくちゃ!







どうして
満面の笑顔で
目をキラキラさせて
そんなこと言うの?

沢井さんは
ただ聞かれたから
素直に答えただけよね

だけど


アタシには



氷の刃




知ってる?
気付かないって

罪なんだよ……