遠い昔にママが言ってた言葉が今でも脳裏に焼き付いている。

あの日、その言葉は私の一生のテーマになった。

「お嬢様っていうのはね、髪の毛が長くて、ピアノが弾けて、絶対に処女なのよ。」

なんだ???

ショジョ???

少女の聞き間違い?

気にはなったけど、気にしない。
とりあえず髪の毛は伸ばそう。
ピアノも習わなきゃ!!!

女子力が目覚めた瞬間。

畠山 愛…齢4歳。


幸いなことに髪の毛は生まれてこのかた切ったことがない。

っと、言えば嘘になる。

目にかかる前髪は100均の安いハサミでママがザクザク切っていた。

艶はあるけど不揃いな毛先は、細く柔らかい薄茶色をしていたけれど…それだって赤ちゃんの産毛の生き残りに過ぎなかった。


クルクルの天然パーマ。
クルクルしてるから、やたら絡まる。

DNAのせいかなんか知らないけど、変に朱色がかった茶色の毛質。

そんな髪の毛が大嫌いだけど、お嬢様になる為だ。

やるしかない。

せこせこと、ママの少し高めのシャンプーに手を伸ばすようになった。

シャンプーインリンス…なんて使っていては、お嬢様どころか姫サマにもなれるはずがないもの。。。


その3日後。


面倒くさがりな私が初めてママに「お稽古」なるものを始めたいと語る。

「ママ!私、ピアノが習いたい」

笑われて終わった。(笑)

ひたすら笑い続けてるママの顔を見てると、
目の横がピクピクして腹が立ってきた。

それが通り過ぎた頃、耳がジンジンして、脳みそが痺れて、それからそれから…

顔面が熱くて仕方がなかった。


絶対ピアノ習ってやる!!!


絶対、習って良いよって言わせてやる。。。


保育園の、藍ちゃんも、蘭ちゃんだって、ピアノのお稽古始めてる。
お嬢様目指してるに違いない!
ここで負けたら女がすたる。

4歳のこの瞬間は絶対に忘れない!


その後2年間。


毎日、ママとパパの前で正座をし、いわゆる三つ指?ってのをついて頭を絨毯に擦った。



「お願いします。どうしてもピアノが習いたいです。」


最初は笑っていた両親も、半年を過ぎた頃には笑わなくなった。

一年過ぎた頃にパパが、

「俺は良いと思うよ。」っと言ってくれたが、ママは頷かなかった。


一年半過ぎる頃に、ママが近所のおばさんに、近くにピアノ教室ができたことを聞き、一度見学に行くことになった。

待望の2年目。

2年間擦った額は少し黒ずんだけど、ようやくママのオッケーが出た。

髪の毛を伸ばす。

ピアノを習う。

ここからは私の努力次第!!!

ん???

ん〜?????

処女って、一体どうやってなるわけ???

ってか、ショジョって、そもそもなんのこと?


愛…齢6歳。

誰にも聞けないまま「お嬢様」を目指す!!!